2016年、春。
前回よりもひと回り大きなバックパックを背負って、私は成田空港におりました。手にはアイルランド大使館のスタンプの押された1年間の滞在許可証。胸は前回よりも密度の濃い不安が立ち込め、口元にはそれ以上に濃厚な期待感から笑みが漏れておりました。
これは、2012年の春、スコットランド一周蒸留所巡りの旅をしてきた私が、その時の感動を忘れることができず、ふらふらと気の向くままに地球の裏側で生活することになった、その1年間の日記です。
今回私が選んだ国は、アイルランド。ご存知、ウイスキーの発見、ギネスの発明、そしてパブカルチャーの発祥という、まさしく酒飲みの国です。スコティッシュとアイリッシュは似て非なるものですが、暖かくフレンドリー、かつシニカルでジョークが好きな人々のキャラクターは、私を魅了してやまない大きな共通点です。
前回は初めての海外旅行でしたが、今回は初めての海外生活。前回の旅行でいただいた、様々な方への恩を返しに行く。そして、より深くその国の文化や人々と交われるような1年にしよう。そんでそんで、新しくできた蒸留所もできたらたくさん行こう。ぼんやりとしたような、はっきりとしたような目標を胸に、私のダブリンでの生活はスタートしました。
いつかダブリンでギネスを飲んでみたい。スコットランドの新しい蒸留所にも興味があるーー。
そう思っている方への、ガイド代わり、とはいかないまでも、なんらかのキッカケになるような日記になれば幸いです。