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討論会2 ブレンダーズトークショー(2)

さて前回の続きです。


Q:近年日本のウィスキーが世界でも最高峰の賞(アワード)を獲得されてるが
何故日本のウィスキーのスタイルが世界中の愛飲家に受け入れられるのか?

A:(輿水氏):いくつかの要素はあると思ってる。製法はスコッチと同じものの
(日本独自の)テイストは明らかに違うものを持っている。
日本の水や感性によって自ずと違うものが出来るわけでそれを新鮮さとして
受け入れられてると思う。もう一つ、私たち作り手は極々当たり前のことというか
スコットランドの製法と日常的に比べてどうこうという意識が持ってないからかも
しれないけど、作り手としての拘りならば蒸留器だったら直火の蒸留釜に拘るとか
日除けの発酵槽に拘るとか、ビール酵母、エール酵母に使うことに拘るとか…
これはスコットランドの伝統的な物づくりに非常に拘ってる部分と同じように
古くから当たり前でやってきたけど…例えばミズナラの樽で熟成させるとか
日本のオリジナルな製法…これは私たちが多様なブレンデッドウィスキーを
提供するという意味でも、一つのメーカーとして沢山の原酒を作り分ける様々な
試みや蓄積が海外で新鮮さとして…驚きを持って受け入れられてるのでは?。と回答。
(デイヴ氏):ありがとうございます。佐藤さん、お願いします。
(佐藤氏):ウィスキーの品質の基本というのは「個性と調和」だと思っている。
ウィスキーとして期待される個性を持ちながらきちんと熟成されて調和されている。
日本のウィスキーは(余所が悪いという意味ではないけど)基本をしっかりして
常に原点に戻って、さらに新たな品質を提示している点が評価されてると思う。
きちんとした発酵をさせ、独自の蒸留をし、きちんと熟成させる。これを忠実に
やってる結果がこういう評価に繋がっているのではないか?と回答。

(デイヴ氏):国外の視点から申し上げると、日本のウィスキーは独特な味があり、
それが加わってもう一つのバリエーションとして楽しまれていると思う。
ウィスキーは個性の世界なので日本の蒸留所の新しい個性が発信されてることが
世界の愛飲家に受け入れられてると考えられる。
また日本のウィスキーの品質管理がスコッチにもないような味の正確さをもたらして
いると思う。この世界も革新が必要であり常に先を見なければいけない。
そこで最後の質問です。

Q:輿水さん、サントリーではスコットランドでもあり得ないような素晴らしい
出来事がありますが…山崎のポットスチルを完全作り直してますね?
具体的にどこがどう変わったのか?

A:(輿水氏):山崎蒸留所は一昨年…半年間工場を止めて12基…6セット(初溜と再溜)
のうち3セットを入れ替えた。ウィスキーのマーケットが厳しい状況の中、半分の釜を
入れ替えることで「何でこのタイミングで投資するのか?」と新聞社からも関心持たれて
質問もされた。これは設備の老朽化や投資のタイミングではなく将来の新しい品質を
作り込みたい思いがあったから。ブレンダーは非常に欲張りな性格を持ってて…(笑)
ブレンドする為の素材。原酒は多様性に富んでる個性的なものが欲しい。
ボディーはもっとリッチに、エステリーなものはもっと華やかに。
今の作り分けてるものをさらに進化させたい。
品質が上がって多様化が進めばブレンダーの仕事の幅がどんどん広がる。
この仕事が実際の商品に結びつくのは十年先とかの世界だが、こういう積み重ねで
商品の品質が上がると同時にそれによって提供できるテイストの世界が広がる。
今回の取り組みは初溜釜を全部直火の釜にした。これもリッチな酒造り…もっと
サントリーテイストの幅を広げたい気持ちの表れである。と回答。

(デイヴ氏):それはウィスキー業界の革新的な出来事だと思う。
山崎にまだ行かれたことのない人は一度訪れて欲しい。

Q:佐藤さん、ニッカさんも同じくらい新しい味の開発という点で革新的なことをされてますが?

A:(佐藤氏):今の輿水さんの話を聞いて非常に羨ましいっていうか…(一同笑)
革新的というか原点回帰でやっている。一つはグレーンウィスキーに関して
カフェスチルという旧式な融通の利かない??を持ってるが、この特性を生かして
原料100%麦芽で作った(~中略~)カフェモルト…それを敢えて作って従来の
モルトウィスキーとブレンドしてオールモルトを作った。
それから余市の(風土を適した)ヘビーピートタイプをこだわって作った。
宮城峡はエステリー…まろやかで華やかなタイプを。
最近はシングルモルトというものをもっと皆様に親しんでもらいたいことで
1月16日に発売した余市 シングルモルトは年数表示していない。(~中略~)
比較的従来とは違った価格の抑えられた商品を作った。ブレンダーとして
「いつかこれはやりたい」とずっと考えてきたもの。
いずれそういうものが親しく感じられる時期が来るだろうと。(~中略~)
これから商品に関しても新しい発想でやっていきたい、と回答。

(デイヴ氏):今ここで聞いてきたことは蒸留職人の人生そのものだと思う。
いつでも前進をする新しいよりよいものを作っていこうという気構えの話だった。
その中でより完璧なものを目指していくというこの御二方、他蒸留所の方々が
日本のウィスキーの将来を担っているのは非常に喜ばしい。

と締め。30分に渡る濃いトークでした。

(文責:清水Liff竹菜)

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