昨日本を紹介したときに、そういえば最近ウイスキーの本を紹介していないなと気がついたKWC企画世話人です。
最近話題の本を読みました。
書名: ウイスキー起源への旅
著者: 三鍋 昌春
出版社: 新潮社
ISBN-13: 978-4106036569
単行本: 267ページ
発売日: 2010/04
第一部 ウイスキー起源、第二部 ウイスキーの発展 となっていて、わたしは、この著者の本領を発揮しているのは、本のタイトルの一部ともなっている第一部のウイスキー起源ではなく、第二部のウイスキーの発展だと感じた。
著者の専門分野であるウイスキーの味わい方、作り方、そして、発酵、蒸留、熟成、それらの操業についてスコットランドで学ぶときの様子、バランタイン伝説のブレンダー、ジャック・ガウディ、その後をついだロバート・ヒックスとの交流や、ジャック・ガウディから Mas MacMinabe というスコットランド名をもらったこと、短時間でウイスキーについてのすべてを学ぼうとして、彼らをも感動させた話など、第一部が吹っ飛ぶぐらいによかった。この第二部メインで本を一冊書いて欲しいと思ったぐらい。
第一部については、さすがに歴史の専門家ではないためか、最近になって発展した遺伝子解析によって、ハルシュタットやラ・テーヌ文化を築いたケルト人と、島のケルト人は別物で、島のケルトは、大陸ケルトの子孫ではないことがわかっていることなどには触れられていない。大陸ケルト→島のケルトという民族移動はなかったのである。ウイスキー起源についても、何か決定的な証拠があるわけではなく、著者の推論に推論を重ねたものという印象を拭えない。
また、本の中に頻繁にでてくる”エディンバラのプリンセスストリート”というのにも面食らった。この通りは Princes Street と書く。18世紀の”ニュータウン”計画でこの通りを含む新市街を作ったときに、元々は St Giles Street と名付けるはずだったのを、時の国王ジョージ3世がそれをいやがり、自分の息子たち=王子達の通りということで、王子 = Prince の複数形で Prices Street という名前をつけたのである。カタカナで書けば、プリンスィズストリートとなろう。プリンセスストリートなら、Princess Street のはずである。エディンバラに留学していた著者の大ボケか、はたまた、腕のない編集者のせいかわからないが、何度も何度もでてくるだけに非常に残念であった。
このようにいくつか気になる点はあるものの、著者のウイスキーに対するあふれる思いや情熱はすべてぶつけられているように感じる。著者によれば、ウイスキーの酔は「覚醒の酔」だそうなので、ウイスキーを飲んで感覚を研ぎ澄ませて読むのにちょうどよいかもしれない。
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