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こそっと酒を飲む

 店の片隅にドカンと居座っている樽がある。貫禄はあるのだが、いかんせん狭い店にとっては嵩張る存在でもある。もともとはタプローズの樽にブレンドウィスキーを詰めたもので、年に1回のお祭りに混ぜ合わせてもらった。できたては少し角があったが、数ヶ月を過ぎてまろやかに熟成してくれた。

 樽の下にメジャーカップが付いており、そっとグラスで押し上げてやると30mlが自動的に注がれる仕組みになっている。わざわざボトルを取り出す必要がないので、自己消費が大量に発生する酒である。特に飲みたい酒が決まらない場合にチョイスするには、持ってこいの酒といえる。非常に上品なブレンドに仕上がっており、度数も高くないので非常に飲みやすい。

 ブレンダーの辰巳氏と岩田氏の造り上げた傑作といえる。一応はチーフブレンダーとして、ベースのブレンドを加工しようとは試みたのだが、あまりの出来の良さに手が出なかった。グレンファークラスの1962と1966数種、ボウモアの1966、ブナハーブンの1966を少量加えて出来上がりとなった。

 私はお客様と一緒に酒を楽しむのだが、 オリジナルブレンドは特に盗みやすい酒である。グラスを樽に近づけるだけで、その中から芳醇な香りを湛えた酒が満たされるのだから。注がれた酒は私を愉快にし、シャイなバーテンダーがお客様と対等に会話ができるように、寛ぎと快感をもたらしてくれるのである。

 心地よい時間と、甘い香りに乾杯!

#オリジナルブレンド

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