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096. ボウモア / Bowmore(フェス編)

2012.05.30

 ウイスキー漬け、アイラ島で迎える朝も今日で5日目である。例によって7時過ぎのアラームで同室のザックが起こしてくれたのだが、この日はぜんぜんゆっくりでも問題ない日。8時半ごろまでゆっくり寝て、その後しっかりと朝ご飯を食べてからホステルを出ます。

 この日は久しぶりの単独行動。アイラについてからは、あっちの蒸留所、こっちの蒸留所行くのに、同じ宿の人なんかと共に行動することが多く、それはそれでとても心強いし楽しいもの。久しぶりの単独行動は少しく心許ないような感じもしたけれど、途中からは気楽さを取り戻せた。

 そんなこんなでこの日。まず向かうは本日がオープンデイのボウモア蒸留所です。

 前日、ラガヴーリンからの帰りに「そうだ。明日のツアーを予約しておこう」と、ボウモアに立ち寄り、ビジターセンターのお姉ちゃんに訊ねたのだが、曰く「明日はオープンデイだから予約は要らないよ!ツアーはフルブックだよ!」とのこと。きちんとしたガイド付きのツアーやマスタークラスなんかは満員ってことかな?ブルイックラディのように、勝手に施設内も見れる感じなのかな?と理解し、まぁそれならそれでいいか。結局予約などはせずに(出来ずに)この日を迎えたのである。

 果たしてちゃんと見ることできるかなー。など、一人の心許なさも手伝って、不安を抱えながらもボウモア蒸留所に到着です。

(ボウモア蒸留所は街のほぼ中心に位置している)

 蒸留所の門の前では、スタッフの男性がティッシュ配りよろしく何かを配っており、なんじゃらほい、と受けとってみると「FREE DRUM」と書かれたチケット。なんでもこのチケットを提示すれば一杯無料で試飲させてくれるんだそうだ。
 余談ですが、こちらの男性。私が門を出たり入ったりする度にこのチケットをくれるものだから、最終的には4枚も手元にチケットが。うち2枚は引き換えましたが、残りの2枚は記念にと取っておくことにしました。

 さて、オープンデイのはずのボウモアですが、どうもあまり盛り上がっている感じはありません。人は多いのですが、まだオープンしたての時間だったからかどうも活気がないというか…。
 そしてなにより一番問題なのは、ビジターセンターは開いているのですが、蒸留設備のある建物はオープンになっているわけではないということ。うむむ。ツアーはフルブックだって言われたし、これは下手したら中は見れないんでないの?と、また少し不安を増大させながらも、とりあえずは折角もらった「FREE DRUM」のチケットを引き換えに、ビジターセンターの2階へ。

 2階へあがると、そこにはカウンターが2種類。一つは試飲用のボトルが並んだカウンターで、もう一方では女性スタッフがボウモアを使ったカクテルのプレゼンを行っていた。海に面したドアを抜けると、そこはちょっとしたベランダのようになっていて、とても気持ちの良い空気が流れていた。
 とりあえず、試飲のチケットで、引き換えられる一番いいモルトであったオフィシャルの18年をいただき、さらにカクテルブースで出されていたカクテルも一杯いただき、朝もはよからほろ酔いになってしまいます。

(カクテルブース。フレッシュオレンジを使ったカクテルを出していた)

(飾られていたボトルの中で、最も古かったのがこれ。1890年て!)

 そんなこんなで、だいぶゆっくりしていたにもかかわらず、相変わらずオープンデイの盛り上がりには欠けるような雰囲気。

(バンド演奏なんかもあったけど、この有様…。閑散とし過ぎだろ…)

 もしかしたらこれは早く来過ぎたのかもしれん。少し時間をあけてまた来よう。と、一旦蒸留所を後にしてボウモアの街をぐるぐる回ることに。

(ボウモアの街といったらこちら。ラウンドチャーチですね。悪魔が隠れることの出来ないように円形にしたんだそうです)

(ラウンドチャーチ側から見るとこんな感じ。坂が急で、まさに街を見下ろすように立っているのがよく分かります)

(街の中央にある広場には、ご覧のようなタイルが描かれています。各蒸留所の位置もばっちり)

(海沿いに立つ蒸留所の姿はとても絵になります)

 もらった試飲の一杯を傾けながら広場のベンチに腰掛けていたら、地元のおっちゃんと思しき人が、私の手に握られたコップを見て「ポイズン、ポイズン」と言いながらにやにやしてきて、私も「これはいいポイズンだよ」みたいに答えてにやにやしたりして楽しかった。しばらくふらふらしましたが、ボウモアの街自体も決して広いわけではありません。手持ち無沙汰的に、本日もう一つの目的地であった、アイラエールのブリュワリーを先に行こうかなーなど思ったりもしましたが、結局良きところで再び蒸留所に突撃して行くことにします。また入る時には門のところでチケットを受け取ることも忘れません。

 所内へ入ると、ビジターセンターへは行かずに蒸留設備のある建物の方へ。そのまま入れないかなー、と様子を窺っていると、スタッフTシャツを着たお姉ちゃんがいたので「中見れます?」と確認。お姉ちゃんはどうやらバイトかなんかだったようで、あまり詳しく分からない様子。「分からないけど…。ツアーで見れるはずだからビジターセンターで聞いてみて」と。ツアーはフルブックっていわれたんだけどなーと思いつつも、センキュー言って受付へ向かいます。
 そのままビジターセンターに行ったはいいですが、受付にはやはり長蛇の列が出来ており、並ぶのをためらってしまう。うむむ。どうしようかなー。と思っていると、やはりスタッフTシャツを着たおっちゃんがふらふらしているのを発見。よし!と思っておっちゃんを捕まえて「中見たいんすよー」みたいなことを聞くと「予約してる?」と。「答えはノーだ。なぜならフルブックだから」と無駄に胸を張って答えると、おっちゃんは少し考え事をするように視線を宙にさまよわせたけれど、すぐに「ついてきな」と手のひらをひらひらさせると所内へ案内してくれた。

 ここからはおっちゃんによるプライベートツアーがスタート。「ボウモアは写真NGだよ」とホステルで知り合った人に言われた気がしたので、撮影は控えていたのだが、そんなことは無く、むしろおっちゃんから「撮らないのか?」と言われてばしゃばしゃ撮りながらのツアー。いろいろと私の拙い英語による質問にも答えてくれて、これぞプライベートツアーの醍醐味。とても充実したツアーをしてくれた。それでもおっちゃんは「本当のツアーじゃなくてごめんよ」と言ってくれ、私はそれに対して恐縮しっぱなし。いえいえこちらこそオープンデイのクソ忙しい時に無茶言ってその上こんな親切にしていただいて「ごめんよ」なんてそんなそんな滅相もございません、みたいなことをなんとかジェスチャーだけで伝えきってお礼を言っておっちゃんとは別れる。いやー。いいツアーだった。

(スチルハウス。奥の初留釜からはもうもうと煙が立っている。奥にいる二人の内、右手に立っているのが案内してくれたおっちゃん。左手のおっちゃんはスチルマンらしく、いろいろ作業しながらも突然の闖入者を歓迎してくれた)

(なぜか一つだけコンデンサーが外に出ている。「なぜ?」とおっちゃんに訊ねたら、例によって「場所が無かったんだろ」とのお答えが)

 おっちゃんのおかげでただでツアーも回れて大満足。しかし、こんなに良くしていただいたのだから、恩返しの意味も込めて、ちゃんとしたツアーにも参加しよう!と思い立ち、翌々日のツアー、しかも15£もするちょっといいツアーの予約をする。蒸留所の中の設備などに関してはその時の記事にまとめてあげますので、今回は写真少なめで。

 ツアーの予約を済ませたら、ボウモアの街のパブで一杯二杯、はしご酒をして、今度の目的地アイラエール・ブリュワリーへ向かいます。
 

#Bowmore

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