2012.05.26
朝。アイラ島で迎える初めての朝である。前日はボウモアでのキックオフパーティを諦めて宿でゆーっくりのーんびりしていたので目覚めもいいはずなのだが、どういうわけかよく眠れずにしっくりこない寝起き。ぼんやりする頭のまま階下へ下りていき、朝ご飯を済ませます。
(ハギスにブラックプディングもついた朝ご飯)
どうも調子が優れず、せっかくの朝ご飯も少し残してしまうほど。ぼんやりしたまま部屋に戻ると、今日の予定をいま一度確認。まず向かうはフィンラガン。何があるのかもよく分かっていないし、たしか湖があるんだよね?くらいの認識ではあったのだが、ウイスキーのボトル由来の地というだけで、私には赴く理由になることだろう。
9時過ぎにはチェックアウトを済ませ、前日には死にそうになりながら歩いていた道を引き返していく。今回は水もしっかり補給しているし、空いたペットボトルに水道水もきっちり詰めてきている。足取りも軽くどこまでも歩いて行けそうな気分。さくさくと進んでいくのだが、こういう時に限って車が止まってくれる。
後ろから近づいてきた車が私の隣で止まり、何も言わずに窓から私の顔を覗き込んでリアクションを待っている。もし、こういった経験が初めてだった、多いに戸惑い、俺なにかしたっけ?とあわてふためくところであったかと思うが、最早この展開にも慣れたもの。こちらから、勝手にドアを開けさせてもらって「カリラまで」と行き先を告げると、やはり何も言わずに大きく頷いて、私も「サンキュー」とだけ言って乗り込みます。せっかく車がとまってくれたのだから、近くのフィンラガンではなく、遠くのカリラまで送ってもらうことに。
ここで余談ですが「カリラ」はあくまで日本語発音。蒸留所の名前は、どこもそうですが発音が難しい。先日のブナハーブンなんかは「Bunnahabhain」という英語表記をだけをみると、どうしたって「ブナハーブン」なんて読めない。私もその辺を意識して少しは英語っぽい発音を試みたのですが、意外や意外、全くのカタカナ語発音でも通じるもので、前回のブナハーブンも今回のカリラも一発で理解してくれました。余計なことをいうと「カリラ」は、カタカナ語で「カオルアイラ」と表記することもありますが、実際の発音はそれを早口で言ったみたいな感じ。つまり「カォルィーラ」といった感じの発音で、やはり「カリラ」、ちょっと本格っぽくすると「コッリーッラ」って感じに私には聞こえました。
そんなこんなでアイラが地元だというおっちゃんに乗せてもらって、カリラ蒸留所との分かれ道まで。アイラの住民との触れあいに心躍るような心境の私は、何かと拙い英語で話しかけるのだが、おっちゃんはどうも無口であまり乗り気ではないみたい。ちょっと思ってたんと違う、なりながらも、お礼を言って別れます。
おっちゃんの親切のおかげで今日の予定がのっけから狂います。急いでパンフレットを広げ、カリラのツアー時間を確認して見ると、最も早いツアーの時間は9時半から。時計を見ると、いまはその時間を2分ほど過ぎたあたり。この時間のツアーを逃すと、次は1時間半後とかです。そうなると折角のおっちゃんの親切も無に帰してしまう。大きな荷物を背負ったまま駆け足で蒸留所を目指します。
(看板には、かつての「花と動物シリーズ」で描かれていたアザラシの姿も)
(やはり樽の標識はあった)
(岩に刻まれた「CAOL ILA」の文字)
(急激なヘアピンカーブを下っていった先に蒸留所の姿を発見しました)
思いの外、分かれ道から距離があり、蒸留所に到着したのは9時半を15分ほどまわった頃。ルーズなスコティッシュ時間に望みをかけながらビジターセンターに到着すると、ちょうど同時に、ビジターセンターのドアから団体が出てくる。その中にガイドっぽいお姉ちゃんの姿を認めることが出来たので、急いで駆け寄って「この回のツアーに参加できますか?」と訊ねると、少し考えながらも「あー。OK!」とぎりぎり参加することが出来た。
無事ツアーに参加できて一安心だが、こちらはディアジオさん系列の蒸留所。例によって中の撮影は禁止ですので、写真はございません。ディアジオの持つ蒸留所の中でも巨大な蒸留所で、アイラの中では最大の生産量を誇る蒸留所とあって、巨大なマッシュタンや全部で8槽あるウォッシュバックなど、設備も大規模。
スチルハウスは海に面していて、これもディアジオ系列の蒸留所ではお馴染みの全面ガラス張り。窓の隙間からは潮風が吹き込んできて、とても気持ちの良いスチルハウスでした。
一緒にツアーをまわったお兄ちゃんたちがやたら陽気に色々とガイドさんにちょっかいを出しており、予定のツアー時間を大幅に押しての終了。私が開始時間に間に合ったのも彼らが最初っから飛ばしてくれていたおかげでしょう。
(石造りの建物には「CAOL ILA」のロゴ)
(ディアジオの持つ蒸留所はどこもガラス張りのスチルハウスがよく目立っています)
(カリラの旗がはためく向こうには、対岸のジュラ島にそびえる双子の、通称「おっぱい山」が)
(まさに海沿いに位置する蒸留所です)
(蒸留所名の書かれたウェアハウスも。潮風の影響をうけないわけがありません)
ツアーを終えて最後は試飲。フェスボトルないかなーと思っていたのですが、この日はまだカリラはオープンデイを迎えていません。残念でしたが、その代わりに蒸留所限定のモルトが試飲できたのは嬉しかった。
(これがまた美味しかった!フレッシュフルーツのようなアロマが感じられて、フレーバーもかなりスイート。残るスモーキーさも心地よく、余裕があれば購入したかったな…)
ディアジオのツアーはどうも、どこのツアーも大差ないというか、マニュアル化されているような印象で、あまり親切でないイメージがあったのだけれど、こちらのガイドをしてくれた女のコは、私が試飲をしながらショップを眺めていたら、遅刻して聞き逃していた最初の部分の説明をわざわざしてくれたりして優しかった。
さて。ツアーを終えても、まだ朝の11時前である。ウイスキー漬けのアイラでの日々はまだ始まったばかりなのである。
#Caol Ila