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066 ローズアイル / Roseisle

2012.05.12

 エルギンで一泊して、翌日も朝から蒸留所巡り。まずはエルギンの町から北西に位置しているローズアイルを目指します。

 「ローズアイル蒸留所」というと、その聞き慣れない蒸留所名から、グレーン蒸留所?はたまた閉鎖蒸留所?と、お思いの方もいるかもしれませんが、ところがどっこい。こちらは正真正銘のモルト蒸留所。それも天下のディアジオさんが所有する蒸留所でございます。
 さて。それではなぜにこんなにも知名度が低いのか。その理由は簡単で、なんとこちらの蒸留所、2010年の10月にオープンしたばかりのできたてほやほや蒸留所だからなのです!
 私が訪問した当時は、まだオープンしてから1年半といったところで、ぴっかぴか。当然ボトリングなんかはされているわけも無く、蒸留所関連のニュースでもチェックしない限りこちらの蒸留所名を知ることは無いでしょう。
 と、まぁ大風呂敷を広げましたが、思えば、こちらをご覧頂いている皆さんともあれば、ご存知の方も多いかと存じます。なにはともあれ、ローズアイルに向けてバスに乗り込みましょう。

 エルギンのバスステーションで運転手さんに「ローズアイルまで!」と言うと、おっちゃんが要領を得ない様子でなにやら言うので「蒸留所に行きたいんだ」と言うと、納得した様子で「モルティングスだな」と答えてくれて安心。20分足らずのバスでの移動です。
 しかし、そんなやり取りをしていたらバスのチケットをもらうのをすっかり忘れていた。或いはおっちゃんが渡し忘れたのかもしれないが。せっかくリターンチケットを買ったのにな、ともやもやしながらも、走り始めたバスの中でおっちゃんにそれを確認することも出来ずに窓の外を眺めていると、田舎道の先に、なんとも周りの風景とそぐわない色合いの巨大な建物が!
 一目であれだ、と分かって、おっちゃんも目で合図してくれ目の前で降ろしてくれる。もうわくわくがとまりません。

 というわけで、こちらがそのローズアイル蒸留所の外観です!


(どどどーん!ディ・ア・ジ・オー!)


(茶色の蒸留棟にパステルグリーンが生産棟?かな?にしてもすごい色合いだ)

 まったくもって今までの蒸留所とは違う様相。まるで巨大なショッピングモールか何かのようです。
 とりあえず興奮気味に写真を何枚か撮った後で中へ。

 バスの運転手さんが「モルティングスだな」と言ったことでも分かるように、こちらは本来、ディアジオさんが持つ4つの製麦所のうちの一つ。その製麦所の片隅に、こちらの蒸留所が建てられたとあって、敷地内はかなり広大です。
 とりあえずオフィスを探そうと奥までふらふらと歩みを進めたのですが、奥では「モルティングオフィス」しか発見することが出来ない。どこか他に「ディスティラリーオフィス」があると思うんだけどなー、それともここでいいのかなー、なんてふらふらしながらも周りを見渡すも、朝一だからか誰もいない。
 とりあえず、入り口に近い方が蒸留所で、奥に行けば行くほど、そっちは製麦所、というように感じたので、今来た道を蒸留所の方へと踵を返します。


(正面の建物を敷地内から撮るとこんな感じ。タンクのでかさ一つ取っても、すごい迫力)


(敷地内にあった謎オブジェ。なんだろう。。)

 さて、探し求めていた「ディスティラリーオフィス」ですが、結局は目の前の建物に入っていたようで、しっかりと矢印で案内もされている。こいつはいいと、そちらのオフィスにお邪魔します。


(オフィスの待合室のようなスペースには、蒸留所の外観を撮った写真が飾られていた)

 オフィスに入ったはいいが、その奥にはさらにドアがあって固く閉ざされている。その隣にはインターフォンがあって、いかにも「御用の方はこちらをPush !」みたいな風情である。
 さてどうしたものかなーと、押すのをためらっていると、なんともちょうどいいことに、外からおっちゃんが近づいてくるではありませんか。
 これはこれは、と、おっちゃんがオフィスのドアを開けた途端に挨拶。いつもの「見せてー」ワードを使うも答えはノー。
 しかし、その答えはいわば予想通り。そう簡単には見せてくれないだろうと思っていたので、ここから交渉開始である。
 
 いつものたどたどしい英語で「この蒸留所は最も新しい蒸留所です。だから私はとてもこの蒸留所に興味があります」「写真撮らない。見るだけ」「スチルハウスだけでいいから」と、まぁ拙い交渉で粘るもおっちゃんの答えは、かたくなに「ノー」。
 しかし、私のこのわがまま放題の交渉に対して、おっちゃんは本当にすまなそうに「ごめんよ。見せてあげたいけど、ビジターは受け入れてないんだ。本当にごめんよ」みたいな感じで、非常に丁寧に対応してくださった。あまりに低姿勢の対応に、こちらもアポ無し突撃したのが本当に申し訳ない気分になって、粘りきることが出来なかった。
 最後に「外からだけなら見てもいい?」と、こちらもお決まりのワードを口にしたのだが、それに対しても答えは「ノー」。残念ですが仕方ない。丁寧に対応していただいたことへの感謝と、突然やってきて無茶を言ったことに対しての謝罪をおっちゃんにして、オフィスを後にします。
 
(真っ青な空も相俟ってとてもいい外観)


(上の写真の茶色の部分を正面から見るとこのようなガラス張りの壁面。ホントに蒸留所じゃないみたい)


(ガラスに張り付いて写真を撮るも天気が良すぎて中が見えない。両サイドには「ジョニーウォーカー」や「オールドパー」と言ったブレンデッドスコッチの銘柄の看板がずらっと。あくまで、シングルモルト用ではなく、ブレンド用原酒を造っているということだろうか。正面にはディアジオの「クラシックモルト」のロゴと「Roseisle Distillery」の文字が。)


(角度をつけてもう一枚。看板の上にスチルの姿がうっすらと確認できる)


(こちらからも。かろうじてネックの部分は見える。両サイドに各7基、計14基のスチルがあるとのこと)

 敷地内をうろちょろしちゃダメだよ、と言われたので、敷地を出て、外から中の様子をうかがいます。


(ホントに蒸留所じゃないみたい。ディアジオさんの持つ蒸留所では最大の生産量を誇るとのことだが、まさに、ディアジオの本気、という感じ)


(裏の方には、巨大なタンクが何槽も)


(モルティングスとの複合施設ということもあり、こっちからの景色は工場みたい)


(ぴっかぴかの蒸留所)

 外からじゃ見える範囲も限られており、もうそろそろ見える場所は全部見尽くしたかなー、ということでふらふら。

 オフィスでおっちゃんに「ここまでどうやってきたんだ?」と訊かれ「バスだよ。これからバスでエルギンまで帰るよ」と言うと「もし、時間があるんならあっちのモルティングプラントに行ってみるといい。小径もきれいだよ」と教えてくれたので、そちらに向かおうかと思うも、果たしてその「小径」っていうのがどこを指すのかがいまいち判然とせず、結局そっちへ行くことは諦めた。


(ローズアイル蒸留所遠景。周りの田園風景との対比がシュールである)

 結局帰りのバスがくるまでぼけーっと待って、エルギンまで帰る。バスの運転手さんは、行きのバスと同じおっちゃんで、私が乗り込むと「よぉ。チケットみせな」みたいに言ってくる。が、「ごめん、無くしちゃった☆てへぺろっ」てやったら「やれやれだぜ」みたいな感じでそのままチケット無しで乗せてくれた。いい人ばっかりだ。

#Roseisle

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