2012.05.09
クラガンモアのB&Bで一泊し、今日も今日とてディスティラリー・トレイルの開始。この日の蒸留所巡りはかなり無謀な計画によって成り立っており、というのも、全部を巡るための公共交通機関は存在しない。もちろん歩きで行けるような距離でもなく、となると手段は一つ。そう。ヒッチハイクである。
地図でご覧の通り、宿のあるクラガンモアからだとグレンリベットを支点に道が左右に分かれており、公共交通機関での移動を考えると、どちらかしか行けない。その上、ブレイヴァルなんかまで行こうとしたらかなりの田舎にあるので、クラガンモアから一直線にブレイヴァルを目指したとしても、バスの本数が少ないために、その日のうちに戻ってくることは不可能。タムナブーリンまでも同様で、トミントールまでも行けたかどうか。。如何せん、まずクラガンモアからグレンリベットまでを走っているB9008道にすら、バスは走っていないのである。
ちなみに、パソコンで管理していたこの日の私のスケジュールには「クラガンモア→(徒歩2時間)→グレンリベット タムナブーリン ブレイヴァル トミントール」と、全く移動のタイムテーブルなどは記されていない。完全にその場でどうにかしようとしていたことが窺えます。
そんな日ですがまずは朝ご飯。スペイサイドエリアには、貧乏旅行者向けのホステルが殆ど無く、必然的に朝食付きのB&Bに宿泊することが多いのですが、朝食付きと言えど、出てくるのは毎回、あの肉肉しいスコティッシュ・ブレックファースト。美味しいのですが、何日も毎朝あんなのを食べているとさすがにちょっと滅入る感じがあります。そこで、今日の朝ご飯は、もう一つのスコットランド伝統の朝ご飯。キッパーです!
(どーん)
主にニシンなどの魚を塩漬けして燻製にしたもの、ということなので、どういったものかと思っていたのですが、そのまんま。スモークされた焼き魚以外の何物でもなく、それなりに美味しかったのだが、フル・ブレックファーストを避けてこれってのもどことなく納得がいきません。美味しかったかと聞かれると、普通。また食べたくなるくらいには普通。まぁ、キッパーってもんが食べたかっただけだしね!と自分に言い聞かせて宿を出ます。
さて、先にも述べた通り、この日の行程は公共交通機関に頼れないルート。グレンリベットまでの道程は、およそ6.6マイル。徒歩だと2時間強の距離です。
宿を出たのが9時過ぎ。普通に歩いていたのでは、ツアーの時間も考えると、ここだけで午前中が潰れてしまう。さらにいうと、このクラガンモア→グレンリベットのルートが、今日行く予定の蒸留所間のルートでは一番分かりやすく、つまり一番車を拾いやすいルート。なんとかスタートダッシュを決めたいと、てくてく歩きながらも車が来たら振り返って親指を立てる、というのをやります。
しかし、朝早くということもあってか全然車は捕まらない。というか、今まで色んな方に拾ってもらいはしたが、自分から能動的に動いてのヒッチハイクでは未だに成功したことが無い。やはり、車を捕まえるには、なにかが足りないのかなー、などと沈思している風に気分を落ち込ませ、さらに悪いことに、天気が崩れ始めて雨が降ってくる。雨が降れば当然、車も捕まりにくくなるわけで、親指を立てる気力すら無くなってくる。
当初の予定では、さくっと車を捕まえて、朝一9時半のツアーに参加して、と考えていたのが、10時のツアーに間に合えばいいか、になり、10時半ならまだなんとか、になり、せめて11時のツアーには、になって、結局ヒッチハイクは成功すること無く、蒸留所に到着したのは11時半頃。
到着する頃にはすっかり、俺はあかん奴や、みたいな自己嫌悪に陥っており、もう今日のルートは諦めた方がいいかもな、とか思いながらツアーの受付。
余談ですが、こうしてスコットランドを歩く旅行をしていると、道の至る所で動物の礫死骸と遭遇することがあります。道路のすぐ脇が森になっているので、当然と言えば当然なんですが、このグレンリベット蒸留所付近では、立派な牡鹿の遺骸が転がっていて、蒸留所のシンボルがこんな姿に。。と思いましたが、すぐに、それはグレンフィディックか、と一人ボケツッコミを楽しんでいたっていうのは本当に余談。
(ようやく看板が見えてきた頃には、かなり悲愴感が漂っておりました)
立派な敷地内をずかずか歩いて、ビジターセンターにてツアーの受付をします。
こちらのツアー料金は無料。やはりでかい所は違うな。と貧乏旅行の身を嬉しくしたのですが、残念ながら内部の撮影はNGとのこと。仕方ないので、ビジターセンター内の様子でも。
(ショップの様子。各グッズの他に、ストラスアイラでも見かけたペルノ・リカール社の持つ蒸留所の蒸留所限定ボトルもあった)
(ボトルのオブジェ)
(蒸留所の歴史を伝えるエキシビジョンには、これまでグレンリベットが取った賞の数々も並べられていた)
ツアー内容は至って普通。グレンフィディックのような化け物蒸留所のような雰囲気を想像していたのだが、以外とスチルは8基のみでこじんまりとしている。
しかし、圧巻だったのはウェアハウス。今まで訪れたうちで見学が出来た全ての蒸留所は、いわゆるダネッジ方式という伝統的な樽の積み方をしており、高さも最大でも3段まで、というものだったのだが、こちらのウェアハウスはラック式といわれる近代的なもの。足場のように組まれた鉄骨のようなラックに、樽が7段から8段も積まれていて、その高さは息をのむ迫力だった。
(スチルハウス。蒸留所のロゴもいい感じ。定冠詞の「THE」にも誇りが見え隠れ)
(スチルハウスを横から。ガラス越しにうっすらとスチルが見える)
(こっちからも。屋内コンデンサーやランタンヘッド型のスチルの姿も)
さて。さくっとツアーを終えて試飲のグラスを傾けます。ホントは、ここに併設のカフェで、ちょっとお茶でもしていこうかしら、とか考えていたのですが、ここまでの移動で時間を費やし過ぎていたので、その計画は無かったことに。グラスを一気に開けると、次の蒸留所を目指します。
#The Glenlivet