MENU

054. トーモア / Tormore

2012.05.08

 グレンファークラスで幸運にも宿のおかみさんが運転する車に発見してもらえて、おかげさまで宿への到着時間が予定より大幅に早まる。普通の町なら、夕方過ぎに時間が余ったらパブにでも繰り出せば、有効に時間を使うことが出来るのだが、今晩の宿があるクラガンモア付近には、一切なにもない。パブどころか、スーパーやコンビニはもちろん、宿以外は農場があるくらい。それと蒸留所。  そう。クラガンモアという地名がさす通り、こちらにはクラガンモア蒸留所があるのだが、なんとこちらの蒸留所、宿から徒歩1分ほどの距離にあった。真裏といっていい距離。もし時間があれば先にクラガンモア蒸留所に行ってもよかったのだが、最終ツアーの時間は過ぎていたし、かと言って部屋でのんびり過ごすのももったいないので、余った時間で、近くにあるトーモア蒸留所を目指すことにします。

 地図だと分かりづらいかもしれませんが、クラガンモアの辺りは盆地のように沈み込んだ地形になっていて、すぐ脇を走る幹線道路A95まで出るにはつづら折りのようになった急な坂道を上らなくてはなりません。
 さらに、道沿いに行けばA95に出ることは出来るのですが、そのまま進むと目的のトーモアよりかなり東側に出てしまいます。
 そっちに行くよりも、方角は分かっているし、ここを突っ切っていった方が近道なんじゃ。。?と思った私。目の前に広がる草原を横断し始めます。しかし、この草原が中々の大平原っぷりでして。おそらくは私有地なのでしょうが、気付いたら私を除く四方が草っ原しかないという状態。ぬかるむ足下をひーこらひーこら踏みしめながら、ようやくA95に出たと思ったら、目の前には鉄条網の張られた柵が。完全に知らぬ間に人の敷地を横断していたようで、少しく人目を気にしながら柵を乗り越えます。
 余談ではありますが、ここクラガンモアは野生動物がたくさん。野うさぎをはじめ、ガチョウだかアヒルだかとにかくそのような感じの鳥たちまで野良化してその辺をうろついており、さながらピーターラビットの世界のようでした。

 それはさておき、ようやくA95に出てからは西進。交通量の多い道路で、しかも歩道なんかはないので、隣をびゅんびゅん大型トラックなんかが通り過ぎていく。といってもここはスペイサイド。通り過ぎる大型車両には、もれなくシーバスやシンプソンズなんかのロゴが入っており、つまりは蒸留所関係車両。「あれに乗っけてもらえば早いかも」なんて思いながらも、引かれないように気をつけながら進みます。

 しばらく道沿いに歩くと左手に瀟洒な建物が見えてまいります。これが、サー・アルバート・リチャードソン氏が設計し、建築学的にも高い評判を得ている蒸留所、トーモア蒸留所の外観です。


(どどーん)

 スコットランドにいくつかある「スコットランドで最も美しい蒸留所」のうちの一つですが、それも頷けます。煙突がなければ、完全にゴシックなホテルかなにかのよう。


(美術館かなにかのようにも見える)

 周りのウェアハウスと思しき建物も白で統一されており、その辺りだけ別荘群のような趣きも。


(シーバス社の持つ蒸留所。例のストラスアイラにしろ、グレンアラヒーにしろ、現在シーバス社が所有している蒸留所は外観が洒落ているのが多い気がする)

 もう遅い時間だし誰もいないかなー、なんて思いながらずかずか侵入していきます。


(なぜかこの扉だけ異様にアップで撮っていた)

 しばらくふらふらしていると、中からおっちゃんが!ラッキー♪と思いつつおっちゃんに近づき「中見せてー」とやるも、残念ながら答えは「ノー」。つれない感じで、おっちゃんは足早にどこかへ去ってしまいました。ちぇーっ。


(こちらの建物がスチルハウス。窓もカッコいいな)


(駐車場に止まっていたシーバスカー)

 中を見れなかったのは残念だけれど仕方ない。その外観だけでも写真に収めれたことに満足して、さっさと宿に帰りました。


(宿に帰る途中、雨雲の隙間から伸びてきた虹が見れた)

#Tormore

この記事を書いた人