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小さな試飲会・・・

生きてゆく上で、どうしても避けられない問題。

老い。

そして 死・・・

昨夜、彼から渡されたのは、古めかしい革張りのスキットル。

「この中身はいったいなんでしょうか?」

通常、僕等のテイスティングでは「縦試飲」や「横試飲」などがある。

造られた年代や、熟成期間をテーマに行う縦試飲。

同じ年代や同じ熟成期間で、違う造り手の物を試飲する横試飲。

もちろん他にも色々な試飲方法があります。

ワインなら白ワインからロゼ、そして赤ワインへ。

ライトな物からヘビーな物へ移る試飲。

安価なものから高価なものへ などなど・・・

昨夜の彼はマニュアル通りではなく、あえて逆試飲を。

アイテムの順番は、レミーマルタン・ルイ13世から始まり

ビスキー・N、そしてダヴィドフとコニャックの試飲だ。

年代の古い原酒から造られたのものから、若いものへと・・・

生まれたばかりの子供は、話す事も一人で歩くこともできず

まして生きてゆくうえで大切な、食事をとることさえできない。

一人でトイレにもゆけず、着替える事も出来ない。

そう、当然のことだ。

そして僕らは当然のように、生まれた時から生きてきた道を

いつしか逆に向かって歩み出す。

人生の旬を迎えたそののち、僕らは徐々に幼少時代へと戻ってゆく。

人生の中に潜む根深い問題。

「時」にしか解決のできない問題。

生きてゆくうえでは避けられないこと。

受け入れなければならないことだ・・・

生きていると色々な難問題が、僕等の目の前を立ち塞ぐ。

その時々に、少しの安らぎを与えられる存在。

問題を解決することができずとも、そんなバーテンダーであり続けたい。

彼が湘南辻堂時代に愛用していた革張りのスキットル。

その中身は非常に穏やかで、華やかな香りのするウイスキーだった。

そう、まだそのウイスキーには息があった。

最近の彼のお気に入り、パルタガス・ショートス。

ハバナの香りを嗜みながら、遠い目をして彼が呟いた。

「逆縁は、一番の親不孝だね」。

そんな彼の言葉が印象的な夜だった・・・

RINGOKAN

#BAR

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