男はどこかで閉鎖的な世界に魅力を感じ、そして憧れをもつ。
男とは、そんな生き物であると想う。
Trinidad Ingenios Limited Edition 2007
夕日が沈んでから少し経った頃、2本のワインを抱えて目的地へ向かう。
途中黒塗りのスカイラインとすれ違った。
角を2つ曲がり、落ち葉の溜まった公園を過ぎると現れる。
ここは男の隠れ家。
僕を迎え入れてくれたのはココの主人、男の隠れ家のボスだ。
無垢の木でできたテーブルの上には、無造作に置かれた
北方謙三の ” 黒銹 ”
彼の代表作のひとつ、ブラディ・ドール・シリーズのひとつ。
「さらば、荒野」 「碑銘」 「肉迫」 「秋霜」 「黒銹」 「黙約」
「残照」 「鳥影」 「聖域」、そして最後の作品が「ふたたびの、荒野」。
僕がバーテンダーになって間もない頃、登場するバーテンダーに憧れた。
その名は藤木年男。
恐ろしいほどの孤独の中にいる、やくざな男である。
その隣には渋い艶を光らせる、柘のヒュミドールも鎮座している。
H. Upmann magnum 50
今夜僕が手にしたシガーは、ボスから頂いた少し早い X”mas Present。
トリニダッドのリミテッド・エディション・インヘニオス 2007。
ボスが今夜手にしたのはアップマン・マグナム50。
彼らしいチョイスだ。
限定物の紫煙をゆったり燻らせながら
僕は興味の眼差しでこの基地内を確認する。
部屋の片隅には古いコニャックが並ぶサイドボード。
ゆったりしたソファの前には大型のテレビと
アンティークなレコードプレイヤー。
そしてリボルバーのディスプレイが鈍い光を放つ。
いくつか未開封のキャビネ物も置かれていた。
化粧箱入りの葉巻も、厳選されたものばかり。
管理も行き届いているのが一目でわかる。
卓上に置かれた柘製作所のヒュミドールの中にもシガーがびっしり。
庫内の湿度は72%。
中にはモンテクリストNo,4 レゼルバの姿も。
流石だ。
柘のヒュミから出てきた巨大なシガーは
ダヴィドフのロイヤル・サロモネス。
このサイズは僕にはまだ未知の世界。
いつの日にか必ず挑んでみたい代物である。
以前キューバ政府高官だけのために生産されていた
葉巻の世界の有名銘柄コイーバ。
時代の流れの中、1982年にキューバはコイーバを世に解禁した。
それと同時に次に政府ご用達となったのがこのトリニダッド。
世間的にコイーバがキューバ産の最高銘柄といわれているものの
実はコイーバ以上のブランドがこのトリニダッド。
ボディが厚く、味わい深かさの中にある滑らかな口当たり。
ビギナーには、かなりのヘビー・タイプに感じるかもしれない。
ボス愛用の黒光りするコイーバのシガー・アッシュトレイ。
僕はその右角にトリニダッド・インヘニオスを置く。
この紫煙を燻らせながらなんとなく感じたのは
優しさを持つボスからのメッセージ。
そんなことを想像させるのが、男の隠れ家であり男の基地だ。
ボジョレ・ヌーボーが解禁されて丁度2週間。
僕の我がままついでにボスには、この隠れ家を皆に解禁していただく。
ダンディズムを感じたい男等に、ここ独特の大人の雰囲気と
それぞれが子供の頃少人数で楽しんだことのある
” あの ” 手作りならではの基地のぞくぞく感を味わっていただきたい。
男の基地は、男の聖地。
少し早いクリスマス・プレゼントだった3時間。
ボス、素敵な時間をありがとうございました。
この後ボスは2本目に、どのCigar をチョイスしたのだろうか・・・
#CIGAR