どうしてもBAR THINK (ここ)にだけは寄りたかった。
僕が初めてBAR THINK に来たのは、いつ頃だっただろう。
まだ僕がバーテンダーになる前、バーテンダーになるためには
どうしたらよいのか。
そんな迷いを、当時袋井市のずっと北の方にあった ” バー赤と黒 ” の
オーナー、柏原氏に尋ねた。
「まずバーテンダー協会に入会したらどうかな。 最近浜松支部が
発足し、篠原君と同世代のバーテンダーが頑張っているから。」
柏原氏のアドバイスをもとに、僕はバーテンダーになるべく
バーテンダー協会浜松支部に入会した。
初めてBAR THINK の勾配のきつい階段を上がるとき
今までにない、妙な緊張感を感じたのを覚えている。
独特の匂いに満ちた今となっては老舗のBAR。
普段着ない白いシャツとスニーカー、ジーンズ姿でそこにうかがった。
神妙な気持ちがそうさせた服装だったのだろう。
それは初めて参加する支部の集まりだった。
自分以外の皆が遠い存在に感じ
「この世界でやっていけるのだろうか・・・」
スナックやペンキ屋でしか働いていない僕は
とても大きな不安を感じる。
初代オーナーの高田氏がBAR THINK (ここ)を始めたのが1988年。
その後、現在のオーナーである鈴木宏明氏がその代を引き継ぎ
BAR THINK は今年で20年目を迎えた。
1988年当時、その時代の浜松市はどんな街だったのか。
僕にとっては夜な夜な楽しむ ” ナンパ ” という邪な希望に満ちた
厭らしい街だった。
先日久しぶりにBAR THINK (ここ)の階段を上がった。
あの当時感じたあの匂いは、そこには無かった。
あるのはBAR THINK (ここ)の主(あるじ)、鈴木氏の丁寧な仕事と
人懐っこい優しい笑顔だった。
#BAR