ある日曜日の夜、一人のバーテンダーから贈り物を頂いた・・・
その日都内某所では「第8回 ウイスキー マガジン ライブ」という
世界のウイスキーファン、関係者の為のビックイベントが開催されていた。
当初東京へ行く予定だった僕は、レストランご利用のお客様から
頂いた、ご予約のお電話でその予定は泡となり、そして消えた。
その日の世界的イベントに参加できなかった僕は、自分への投資として
定期的に足を運ぶ書店で、ある書籍を購入した。
購入したのは、昨年亡くなったウイスキーの権威マイケル・ジャクソン著の
「ウイスキー エンサイクロペディア」
以前よりどうしても欲しかった、プロフェッショナルの為の書籍だ。
その夜、その書籍を眺めていると、憧れの先輩バーテンダーご夫妻が
ご来店下さった。
その彼等とは、数か月ぶりの再会だった。
奥様は当店オリジナルの珈琲を、そして憧れの彼は僕に気を使ってか
バランタイン12年の水割りを注文、それを楽しんでおられた。
3人でお互いの近況の報告を含めた挨拶をした後、彼が手にしていた
紙袋から、ある書籍を一冊取り出した。
「銀座 バーテンダーからの贈り物」
と題されたこの書籍は、この業界の重鎮であり80歳を迎えても今なお
現役のバーテンダー、銀座BAR 5517の稲田春夫氏の自叙伝であった。
わが国を代表するバーテンダーの多くは、もう亡くなられてしまっているが
彼がまだ現役でカウンターに立たれているのは、僕等の勇気であり
そして夢、プロフェッショナルとしての憧れである。
ご来店下さった彼は、若きし頃東京で修業を重ね、今回の稲田氏のように
現在もこの業界の顔である、多くの先輩方との接点を持ち、
また、今もなお銀座を中心に足を運び、多くの先輩や友人等から
多くの刺激を受けに行くというプロフェッショナルだ。
先日、彼の元へある小包が届いたそう。
それは著者である稲田氏から届いた、彼が書いた書籍の束だった。
稲田氏の出版記念披露パーティーにも呼ばれたという彼が
わざわざ僕のもとへ、その中の一冊を届けに来て下さった。
「小包の中身を確認した時から、君にこれを渡したくて」
憧れた方から、少し認めて頂いたような喜び・・・
僕にとって思いがけない贈り物、素敵なバレンタイン・プレゼントとなった。
ブレンデッドのバランタインの12年の、水割りの二杯目を飲み終わった彼
いつものように スッと席を立つ。
彼等のようにスマートな方々は、いつまでもダラダラとは飲まない。
カウンターに居る僕はそんな彼を見て、「やはりスマートな方だ」と思う。
僕も彼等のように努力を惜しまず、健康に留意しながら現役に拘りたい。
静岡県袋井市には、そんな彼がカウンターに立つ素敵なBAR がある。
そんな袋井市が羨ましい・・・
その夜、最後にご来店頂いたアーティスティックなお客様方をお送りした後
独りになった店内で、飲んだのはバランタイン12年の水割り。
彼等と同じ時間を感じてみたかったからだ。
二十歳の頃に勤めていたスナックで、友人等と飲んで以来のその一杯。
あれから20年。
僕が今の彼等の年齢になった時、
どんなバーテンダーに成長しているのか楽しみだ。
柏原さん。
素敵なお心遣いをありがとうございました。
KASHIWABARA”S BAR
0538-43-4533
#BAR