最近,ブラインドテイスティングの記事がないけどやってないの?というお問い合わせをいただきました。
実は結構やってます。
そしてハズシまくってるから載せてないというわけではありません。(笑)
せっかくですからしっかりと考えて自分の肥やしにしたいですし,記事にするのに時間がかかるということもあってたまってしまっていました。
少しずつまた載せていきますね。
これはモルト仲間の山路さんからいただいたブライドテイスティングサンプルです。
ありがたく挑戦させていただきました。
プチSBT from 山路さん
・香り
熟成感のあるこなれた麦がしっかり,バニラクリーム,シナモン,ショウガ,奥から華やかな洋梨やリンゴ,べっこうあめ,やわらかなオーク,奥にピート,少しボトリング後の経年変化も感じる。
・味わい
力強く芳醇に広がる,濃く多彩なフルーティでやや粘性と噛み応えのあるテクスチャー,アプリコットティー,洋ナシ,メロン,リンゴ,フルーツケーキ,染み込む麦の旨み,蜂蜜っぽさのあるコクのある甘味,淡いヒノキを伴う心地良く古いウッディネスとキツくないタンニン,しっかりめのオールドピートがあって陶酔感のある余韻。
・総評
熟成感があるが麦感がしっかり残っており,それに多彩なフルーティが伴っている。
ピートやウッディネスなどに心地良いオールド感や長熟っぽいニュアンスはあるが,不思議なほど過熟感は無い。
総合的にみると,王道の長熟スペイサイドモルトのカスクストレングス。
それほど主張は強くないが,バイセンテナリーのストラスアイラに似たウッディネスやピートが淡く感じられたことから,ストラスアイラを第一予想とした。
ウッディネスのわりに不思議なほど過熟感の無いGMの長熟っぽいニュアンスも感じられ,スミスラベルのリベットあたりも候補に入れた。
ただし,それらのボトルでこんなに度数の高いイメージは無いのが引っかかる。
わりとピートは強めで,オールドゆえのピートなのかピーティなスタイルの蒸留所なのかでちょっと考えたが,後半から余韻のニュアンスからは前者。
ちょっと粘性も感じアプリコットティーっぽさもあったのでクライヌリッシュも浮かんだが,こういうオールドピートのものはほとんど経験が無く,ブローラほど積極的なピートではなかった。
古いボトルだがまだパワフルで麦の旨みの残った飲み頃感もあった。
ヒノキっぽさを重視するとキースや,スペイサイド以外だとブルイックラディも頭をよぎった。
いずれにせよ,とても美味しいサンプルだった。
【Very Good】
予想蒸留所:①ストラスアイラ、②グレンリベット、③ブルイックラディ
蒸留年:1960年代前半蒸留で1990年代後半のボトリング
熟成年数:35年前後
度数:50%前後
カスクタイプ:ヴァッティング
以上のようなテイスティングと予想で回答メールをお送りしました。
正解は・・・、
バルヴェニー BALVENIE 1974-1990 15yo Signatory vintage 57.1%
Cask no.18103~18130, one of 1300 bottles
シグナトリーのバルヴェニー1974,15年熟成のハイプルーフでした。
この頃のシグナトリーにはしばしばある,結構な数の樽のヴァッティングです。
スペイサイドの王道という感じでしたし,私がバルヴェニーに感じがちなアプリコットティーっぽさもありましたから,言われてみれば蒸留所に関してはある程度納得でした。
度数に関しては,50%くらいかなと思っていたのですがまさかの57.1%でした。明らかにそこまでハイプルーフではない感じで,ご本人もそうおっしゃてましたが,おそらく瓶内での経過中に少し抜けたんだと思います。
そしてその抜け感に伴って出てきたと思われるフルーツ感と華やかさがしっかり出ており,それによって熟成期間を実際よりもかなり長熟と捉えてしまったようです。
テイスティングにはある程度満足しましたが,スペック予想はそれぞれずれていて,これらは抜け感を評価できていたら微調整できたのかもしれません。
ボトリング後の抜け感や枯れ感に伴って出てくる要素と長熟で出てくる要素には共通点も多いように思うのですが,オールド感や舌触りのテクスチャーで区別できることが多いと思っていました。
しかし今回はそれが出来ておらず,自分の未熟さをしっかりと認識する良い経験にもなりました。
予想はともあれ,とても美味しいサンプルで大満足でした。
そして,いまさらですが自分はバルヴェニー好きなんだなと再認識しました。
山路さん,素敵なボトルを出題していただきありがとうございました。
#バルヴェニー (BALVENIE) #SBT