フォレスト氏が亡くなって10年が経ちました。
スプリングバンク SPRINGBANK 1968 PACIFIC CALEDONIAN #489 49.2%
one of 271 bottles
香りは華やかで強い、シトラス、フリーズドライのイチゴ、白い花のフローラル、白ワイン、熟す前のメロン、粉っぽく凝縮したニュアンス、乾いた麦や干し草、奥に優しいピート、陶酔感あり、飲むと優しい口当たりから芳醇に広がる、凝縮したシトラスと淡いアプリコットジャム、バニラ、粉っぽいテクスチャーを伴う濃いめの甘味、柑橘の良い酸味、強くブリニー、草っぽさに伴う淡いエグ味も味を深める、後半からタールもあるしっとりしたピート、陶酔感のある長めの余韻。
【Very Good/Excellent】
パシフィックカレドニアン社として故Matthew D Forrest氏がボトリングしたスプリングバンク1968のシングルカスクです。
ボトリングは2000年代前半だったと思います。
以前にもフィンガルさんでいただいて記事にしましたが,今回は有楽町で10回目の命日にあわせて開栓となりました。
いつも以上にじっくりとテイスティングさせていただきました。
まさにモルトの香水というような華やかな香り立ちで,フレッシュながら熟成感や濃縮感を感じる柑橘やフリーズドライのイチゴのニュアンスや白ワインっぽいブドウなど,多彩なフルーツとフローラルがしっかりと主張してきて陶酔感があります。
飲んでもとてもフルーティで,甘味と酸味のバランスも良好です。そしてこれぞスプリングバンクという強いブリニーさも感じられました。
また,香りにも味わいにも粉っぽく凝縮したような要素が強く感じられ,これは私の大好きな要素でもありテンションが上がりました。そしてピートの主張もあり,複雑で陶酔感のある香味を堪能することが出来ました。
このタイプの60年代長熟スプリングバンクは,シェリーの効いたいわゆるイチゴジャム系のものとは違っており,私としてはフリーズドライにしたイチゴとジャムっぽさを共に感じるタイプなのですが,同系統のものとして家で飲んだシグナトリーの1969(#266)やダンカンテイラーの1967(#1943)なんかがあり,これらの味が強く心に残っているためか,このタイプのスプリングバンクを飲むと「これだ感」を強く感じます。
逆にイチゴジャム全開の60年代スプリングバンクは,種類こそ結構飲んでいてスタイルの認識もそれなりにはできているつもりですが,家で丸々1本お付き合いした記憶が無いためか,突き抜けて美味しいのですが「これだ感」では前者に劣ります。どちらが好みということもなく,というかどちらも素晴らしく好みなのですが,どちらがホッと安心するかという違いでしょうかね。
また,最近のスタイルに「これだ感」を感じるドリンカーもいらっしゃるでしょう。
個性もあり,モルトラヴァーそれぞれに想い入れのある蒸留所ですから,飲んできたボトルによってどこに一番の「らしさ」を感じるかが違っているなと思うことがしばしばありますね。
私にとって「これだ感」のあるスプリングバンク,フォレスト氏に想いを馳せながらいただきました。
人づてに聞くばかりでフォレスト氏とは残念ながら直接お話することができませんでしたが,ぜひボトルの感想などをお伝えしつつボトリングの経緯や意図に関してもをお伺いしたかったです。
#スプリングバンク (SPRINGBANK)