エージェンシーらしさにビタミン剤っぽさが加わった面白い味わいです。
インチガワー INCHGOWER 1974-2009 35yo THE WHISKY AGENCY “Flowers” 57.3%
one of 195 bottles, EX-BOURBON HOGSHEAD
・香り:
強くエステリー,華やかな香り立ちで熟成感あり,パイナップル,洋ナシ,熟したオレンジ,少しバナナ,ワックス,バニラ,時間と共に蜂蜜が強まる,白い花のフローラル,ジンジャーエールのようなショウガ,軽やかなモルティ,奥からビタミン剤とミント,淡くビタミン剤。
・味わい:
滑らかな口当たりから広がる,じわりと刺激,香り同様に多彩なフルーティ,洋ナシやパイナップル,ショウガ,旨味もある麦感,コクのある蜂蜜の甘味が強いがしつこくない,ほど良い酸味,ビタミン剤っぽいケミカル感あり,フルーティと共に余韻まで残る。
・余韻:
多彩なフルーティとビタミン剤っぽさ,わりと長めの余韻。
・加水:
よりフルーティになり特に柑橘が強まる。蜂蜜の甘味はそのままで,ケミカル感は減少する。少量なら加水後の方が良いかもしれない。
・総評:
エージェンシーらしいエステリーで多彩なフルーツを感じる長熟モルト。
優しいコクのある蜂蜜の甘味とビタミン剤のようなケミカルフレーバーも印象的であった。
【Good/Very Good】
THE WHIKSY AGENCYが2009年にリリースしたFlowersというシリーズのうちの1本,インチガワー1974,35年熟成です。
リリース当時に有楽町で飲んで,ビタミン剤っぽさが非常に面白かったため,個性をを感じやすい1本として購入していたのでした。
その個性を久しぶりに味わってみたくなり,また,モルト仲間達はこれをどう思うのか気になったため,ブラインドでの出題も視野に入れて開栓してみました。
前回飲んだ時にはもっとケミカルな感じがプンプンしていたように思ったのですが,今回はどちらかというとエージェンシーらしいエステリーさと多彩なフルーティが全面に出ているように思いました。
当時はこういうエステリーなリリースがエージェンシーからたくさん出ており,同時に飲むことも多かったためにマスクされていたのかもしれません。
とはいえ,やはり香りの奥から,そして飲んでみると味わいにおいてもしっかりと独特のビタミン剤のようなケミカルフレーバーが感じられました。
ブラインドで出題した際に,信頼しているテイスターさんからも同様の指摘があり,やはりこのボトルの個性のひとつのようですね。
私はケミカルという表現を以前からベンリアックなんかを中心によく使っていて,最初の頃は聞き慣れない表現でもあり恐る恐る書いていたのですが,最近は気のせいか結構いろんなところで聞くようになった気がします。
今回のボトルは,私がしばしば言及するベンリアックやトマーティンなどのトロピカルフルーツに付随するようなケミカル感(小児用シロップ薬のような)とは違う方向性ではありますが,こういうビタミン剤っぽいケミカル感を感じるボトルってたまにあります。
ケミカルはそれほどポジティブな意味では使わないのですが,かといって必ずしも嫌な個性というわけでもなく,このボトルのようにそれが面白くてボトルを購入することもあります。
ビタミン剤のようなケミカルフレーバーは長熟でエステリーなものに感じることが多く,蒸留所の個性というよりは,熟成の過程ででてくるものなのかもしれません。
#インチガワー (INCHGOWER) #考えたこと