バーは酒を飲む場所だが、出会いと別れの場でもある。それはお客様同士でもあり、店とお客様、そしてバーテンダーとお客様でもある。
当店がオープンして間もない昨年の11月初めのころ、夜も遅い時間に店のドアが開き、ある男性と6年振りに再会した。(以降、O氏とします。)
O氏には以前から年賀状やDMを勤務先に送付していたのだが転職したようで、音信が途絶えてしまっていたのだ。
O氏との出会いは、私が大分市内の店で修行しはじめた頃で、かれこれ20年前の話である。(若かった!) 未熟者であったにもかかわらず、私の作るカクテルをいたく気に入ってくれた。それから4年間の修行時代から独立して店(バー・ハイドアウト)を開店してから閉店までの11年間まで、計15年もの間、私と店を可愛がってくれた心優しきジェントルマンである。
その後、私は都合により店を閉めることになるのだが、忙しいO氏には最後のお礼を伝えることが出来なかった。
6年もの月日が流れ、私は再び店を出すことができ、バーテンダーの道を歩むことになったのだが、O氏はその間、大分の街に飲みに出る度に私の姿を探してバー巡りをしていたらしい。
私はこの町でなんとか知名度をあげようと、店の宣伝を雑誌の広告欄に掲載したのだが、O氏はその店内の写真と記事を見て、このバーをやっているのが私だと直感したらしい! ・・・私にもひとつ忘れていたことがあった。偶然にも私が店を開いたこの町は、O氏が生まれ住んでいる町だったのだ。
O氏と堅い握手をし、再会を喜んだ瞬間、O氏の優しさと男気に熱いものがこみ上げてきた。本当に感謝!感謝!である。 接客業を生業として生きていく以上、お客様との関係は馴れ合いになってはならないが、軽薄なものになってもならない!
いかなる場合であってもお客様との関係は大事にしなければならないと、改めて教えられた再会であった。
そして、出会いから20年たった今も0氏が最後に飲むカクテルは“スィート・マティーニ”!これも6年振りの再会である。
あとがき
バー・ハイドアウト閉店から6年の月日が経ったにもかかわらず、私の復帰を待ち望んでいただき、大分市や別府市より遠路遥々、当店にに来てくださる方々にも、この場をかりて厚く御礼もうしあげます。
また、バー・ハイドアウトでは大変お世話になったのにもかかわらず、連絡がとれず、挨拶もできないままになってしまった沢山のお客様にもお詫びと御礼を申し上げます。
いつの日か、またご縁があって再会できればパーテンダーとしてこの上ない喜びでございます。
#BAR