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ウイスキーの化学 第3回

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【ウイスキーの化学 第3回】

ウイスキーとは名打っているものの、豪快なラーメンに登場してもらいました。

禁煙補助剤のちからによって「ドーパミン」の存在を実感できた私が、ぜひ皆さんにもお勧めしたいのが日々自分の思考・感情が「どのような脳や神経の動きをもって伝達・命令されているのか?」を感じながら過ごすことです。

そこで脂たっぷりのラーメンを食べたくなるのはなぜか?を今回分析してみます。

前回少々引用した”グルタミン酸” ”イノシン酸”などの「うま味」成分は後々詳しく書かせていただきたいと思いますが、近年日本の研究者たちの尽力で、世界的に人間が美味しいと感じる味覚の1つとして認定されました。

このようなうまみ成分や甘味、塩味、香辛料、油、アルコールは食欲増進成分、つまりはおおざっぱにいうと食欲はドーパミンの放出をもって介されるので、ドーパミンをよく出す成分と言えます。

中でも油はほとんど味がしないトリグリセリドでありますが、オレイン酸・リノール酸・リノレン酸などの脂肪酸を含みます。

近年の研究により味細胞膜の中に脂肪酸が結合する受容体の存在が発見されました。

もちろんこれは人間にとって脂肪は効率のよいエネルギー獲得物質であるからこその進化だと言うことができるでしょう。そもそも味覚というものは人間が生きていくために必要な成分を「見分けるために」存在するはずだからです。

さらに油を摂取すると、脳内麻薬ともいわれ、大けがをしたときにも放出されて痛みを抑えるβエンドルフィンが放出され、人間に快感や恍惚感を与えます。

もちろん脳といえば記憶の集積地。ただ味を記憶するだけではなく、ベンゾジアゼピンを代表とする脳内活性物質を介して、その食品は人間にとって好ましいのかそうではないのかの総合記憶がなされます。

つまりは脂たっぷりのラーメンを食べた経験は、βエンドルフィンによって美化され、ベンゾジアゼピンを介して素敵な記憶として脳内に残る人が多いのです。

太るのは嫌だ、胃が気持ち悪いなどなんらかのマイナスイメージが先行すると、この記憶が嫌なものとして残ることもあります。

前者の場合は時を経て、再びその時のような幸せな状態になるべく、脳は記憶に基づいて無意識にもドーパミンを放出させ「またあの脂たっぷりのラーメンが食べたい」と食欲をかきたててしまうのです。これを人は「やみつき」とか「中毒」「禁断症状」などと表現しているのです。

この記憶に理性で抵抗することは困難でしょう。

人間の感情は何らかの根拠、最終的には脳がどのように働いたかによってきまります。

これは人生観とか、人間同士のかかわりあい方とか、勉強の仕方でもなんでもそこに人間がいる限り逃れられません。

脳や神経伝達の研究はいままさに盛り上がりをみせていて、大変興味深いです。

従来どうしても統計的であったり、言い伝えに近かった処世術などについても、根拠が与えられたり否定されたりしています。味覚もまたその恩恵を受け、いまや分析も高度化し、ローコストでかつ人間の本能を刺激する「ジャンクフード」の開発に利用されてしまっています。

今後これらの最新研究結果を交えてウイスキーを探っていくのですが、一方、皆さんが何かに疲れたり思い悩むことがあれば、脳や神経伝達についての情報に触れられるとその時の状況がどのように起こっているのか、それは人間である以上、記憶の経緯から自然なことなのかどうか理解できるかもしれません。対人関係の相互理解にもつながりますし、なんらかのストレスから解放されることも多いのではないでしょうか。

またこのラーメンの話からわかるのは、ウイスキーにおいてもこれまでどのようなお酒を飲んできて幸せな気分、嫌な気分になったかが記憶されていて、ドーパミンの力で無性にまた飲みたくなったり飲みたくならなかったりします。同じ味の成分に出会ったときには記憶が呼び起こされ幸せや嫌な気分が増幅するというシステムが脳にはあるということです。

出会ったことのない味は、その時美味しいと思ったかどうかによって新たに総合記憶されます。大抵はお酒だけではなくこれまで味わったことのある一般的な食品のイメージと組み合わせて記憶されることが多いのです。

たくさんの良質なお酒に出会うことは将来幸福感を増幅して得られることにつながり、一方イメージが良すぎて期待が過ぎると記憶との落差に失望してしまったりということにもなります。やっぱり美味しいお酒に出会い続けられればそれが一番というわけですね。

続く


#ウイスキーの化学

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