以前の『ソーダ割り論』に続き僕のといいますか、厳しくて優しい師匠の『水割り論』です。
これはこの『扉の向こう側。。。』が全国ランキング10位以内に
入った時にUPしようと以前から決めてました。
みなさんウィスキーなど大半のお酒が加水されてボトルに詰められているのはご存知ですよね?
もう10数年以上になるのですが、この件で僕はバーテンダーの素晴らしさを感じ、
この道の深さに衝撃を受けた出来事でした。
この日も営業が終わってから厳しくて優しい師匠が僕の為に練習に付き合って下さってました。
お題は『グレンリベット水割り』。
「うーん。まだまだアカンな。。。」
「すいません。。。」
いつも通り厳しくて優しい師匠は半分を飲んで下さった後グラスが僕の元に。
これは「なぜこの創り方でこの味になったのか」を造った本人が確かめる為。
「お前はバーテンダーが創った『水割り』って飲んだ事あるか?」
「はい。何度かはあります。」
「じゃあホステスさんのは?」
「はい。それもあります。」
「バーテンダーとホステスさんの創る『水割り』の違いってなんや?」
「えっ!(正直考えた事がない。。。)お酒の濃いさとかですか?」
「そう考えるヤツは三流やな。お前はバーテンダーが創る『水割り』と
ホステスさんの創る『水割り』にその差しか分からんかったんか?」
「。。。。」
「もしくはお前がロクなBARでしか水割りを飲んでない証拠や」
「と、おっしゃいますと。。。」
「ええかっ(←これは師匠の口癖デス)バーテンダーが創る『水割り』は
元のお酒を伸ばして上げないとアカンねん。
スコッチは樽に入ってる時、アルコール度数は何度くらいあるねん?」
「60度前後です。」
「そうやろ。じゃあボトルに入ってるスコッチは?」
「45度前後です。」
「せやな。じゃあなんで樽に入ってる時とボトルの度数が違うんや?」
「加水しているからです。」
「その通りや。リリースする樽のモルトは美味しいけど万人が飲める度数ではないわな。
じゃあ飲み易い様、加水してボトルに詰めましょって訳や。」
「はい。」
「そのお酒をお客様が『水割り』でってオーダーされた時、バーテンダーが
考えなアカンのは、そのお酒の樽に居た時の状態をイメージしながら、
その美味しさを綺麗に伸ばしてグラスに表現するのがホンマモンの仕事や。」
「。。。。」
「ええかっ、ホステスさんの『水割り』はいかにお客様の邪魔にならずに
その場を楽しんで頂ける様、創ってる。流行ってるお店の『水割り』は
邪魔にならず、ホンマに美味しい『水割り』や。反対に流行ってない
お店の『水割り』は薄いだけのアルコールの水割りを出してるお店や。
でも、BARは違うで。ここはお酒を純真に楽しむ場所でないとアカンねん。
ただ水でお酒を薄めた様な『水割り』を出すのは三流の仕事や。
そのお酒を生のままで飲んだイメージを想い浮かべながら、その旨味を綺麗に均等に
水で伸ばして上げる。これがバーテンダーの創る『水割り』やねんで。」
僕は当時「美味しさを均等に伸ばす」と言う概念が全くありませんでした。
正に水でお酒を薄めただけの物を創っていましたし、『水割り』ってそう言う物だと思っていました。
ここで書いている事はこの日の一部を書いていますが、他にも今の僕がバーテンダーとして
創る全てに影響を与えた言葉が宝石の様に鏤められていました。
この一日は更にバーテンダーの奥深さに衝撃を受け、
『正しい物』を創る事が出来るバーテンダーに成りたいと強く思いました。
「まだまだやな。でも、味のラインは見えてきたな。
微かやけどグレンリベットの風景が見えてきた。。。」
#僕の○○論