10年への旅3Whisky&wifeNo12
「トワイライトエクスプレス」の真上から天空まで細い筋の空は、綿菓子様な霧が透けている。覆う林は黄色い葉先からブルーグリーンの下枝へ重なり、幹がねじれからんだ深いチャコールの根元は、何段降りると土底か解らない。
「トワイライトエクスプレス」は枕木を枝葉に支えられて、数時間濃い緑の原生林をくぐり平原に近付いた。
広大な畑の遠く民家が点在し、傾いた小型のサイロと打ち捨てた納屋が時折見受けられる。土地に余裕があるため、建物を壊さずそのまま捨て置き、隣に新築するのだろう。これも、北海道をゆっくりと列車旅の発見かもしれない。
二度寝をしてしまい、朝食の時間になっている。ワイフと私はそれでもぐずぐず支度をし、皆がすませた時間に食堂車に腰を落とした。かなり豪勢な朝食で暖かいパンケーキとコーヒーが目を覚まさせた。フレッシュオレンジジュースもうれしい。
右手に北海道の海岸線を見ながらの朝は清々しく、9時には札幌駅に着くのが勿体ない景色がつづく旅だった。
今日は、メインの旅行の目的「マイウイスキーづくり」が余市で待っている。私たちはそこで懐かしい人に会えるとは、この朝には思ってもみなかった。
つづく。
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