映画『ナヴァロンの要塞』の原作者として、多分最も有名なアリステア・マクリーン。『女王陛下のユリシーズ号』は、彼の処女作にして最高傑作との呼び声が高い作品(1955年刊行)。
何を一番最初に持ってこようかな。とちょっと考えたのですが、ここはやはりウイスキー、しかも最初に触れたシングル・モルトが相応しいと思い。(^^;
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(中略)「でもタリスカーなら1本残っています」
彼は劇薬物の棚のところへ歩いて行って、<リゾール>と書かれたびんの栓を抜いた。
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「彼」というのは、ユリシーズ号の軍医ニコルス。極限状況にある患者に、医者が処方する"薬”はウイスキーでしかあり得ない、とほのめかすシーンです。
お話はのっけから極限状況に次ぐ極限状況。私は男ではなく、戦争は知らず(戦争モノはなんであれ積極的にキライ)、なのになぜこの1冊だけが例外なのか。
翻訳者の村上博基氏があとがきで、海軍にも戦闘にもまったくの門外漢であることを詫びていたりするのですが、確かにそういう不思議な魅力に満ちた一冊です。ヴァレリー艦長をはじめ、それぞれに忘れがたい「海の男たち」の物語。(原題『英国軍艦ユリシーズ号』を『女王陛下のユリシーズ号』と訳出した、村下氏の愛情が偲ばれます)。
時代がどうなろうと、国がどこだろうと、おそらくいつまでも色褪せない魅力に満ちた一冊です。血湧き肉躍る冒険、ではなく、ぼろぼろになっているのに不敵にも(あるいは自嘲を込めて)ふっと笑うような、そんな種類のダンディズムに触れたい方に、全力でお勧めします。
んーー、私は艦長もスキだけど、ラルストンが忘れがたいかな。(^^) マクリーンの生まれはグラスゴー。スコットランド魂、みたいなものも妄想しちゃいます。
早川書房「海洋冒険小説部門」総合1位。(で、えーっと? 何年の話??(^_^;・・とりあえず、手元にある文庫本は、1992年刊行です。)
http://www.amazon.co.jp/dp/4150400075