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ハイランドパーク 1996-2007 オフィシャル 日本向け 土屋守セレクト #1072 58.9%

HIGHLAND PARK 1996-2007 OB Exclusive to Japan #1072 58.9%
Spanish oak cask – refill sherry butt

アプリコットやリンゴのジャム、黒糖風味のミルクキャラメル、安価なカフェオレ、仄かに香ばしいスモークを伴う麦芽とミーティなベーコン、蜂蜜やべっこう飴の甘やかなコク、ほんのりと塩気、少し根菜や豆、複雑で長い余韻。

【Good/Very Good, Interesting】

思い入れや新しい知見があったので、今回は長くなります。

2007年、同時のスコ文研代表の土屋守さんがオフィシャルのハイランドパーク5種類をセレクトしてハーフボトルでボトリングしました。
当時としてもかなり凄いことで、ヴィンテージは1973、1976、1991、1996、1998でした。

1973と1976は特に評価が高く、前者はエステリーで華やかな長熟フルーティ、後者は無骨な熟成感に麦の旨みと厚みが伴うタイプとそれぞれ個性の異なる素晴らしいボトルで、個人的には1976が格別に好きでした。
1991はシェリー樽のイメージが強いハイランドパークのイメージを覆すオフィシャルのバーボンカスクで、値段も手頃で当時は1番よく売れていたと記憶しています。

その一方で、1998は当時飲むにはキツすぎるヨーロピアンオークの”どシェリー”でした。しかしリリース当初からスケール感があり、個人的には化けるのではないかと思い(売れ残って)安売りした時にたくさん買い込みました。結果的にそれは正解で、小瓶で変化が早いのか10年程度置いて開けてみると荒さやエグ味が落ち着き、王道感溢れる深みのある美味しさになっていました。そして仲間達とかなりの量を消費したのでした。

昔話が長くなりましたが、問題は今回の1996です。
当時から1998以上に評価の低いボトルで、私もこれに関しては美味しくない+美味しくなりそうにもないという当時の評価に異論なしでした。
シェリー感はさほど強くないのにサルファリーなニュアンスはきっちり主張してきましたし、蒸した豆や根菜のようなあまり好ましくないニュアンスもあり、抱き合わせで買わされた所謂”ハズレボトル”という認識でした。
なんなら選んだ土屋さんもそういう感覚だったのか、お披露目のテイスティングイベントでもあまり好意的なコメントはなく、売れ残ったボトルを何かとオリジナルブレンドなどに混ぜて使っているイメージでした。笑

当時抱き合わせやお付き合いで何本か買ったものがあり、倉庫の掃除で出てきたものを今回何の気なしに開けてみたのでした。

いやはや、想定外に良化してます。

にわかには信じられず何回も飲みましたがやっぱり良くなってます。
サルファリー要素がかなり抜け落ちて支配的でないシェリーの肉付けになっており、ハイランドパークらしい蜂蜜感とコク、そしてらしいピート感が良いバランスで前に出てきます。
知らずに飲んだらちょっと前のリフィルシェリーのハイランドパークの美味しいやつと言われて疑問を持たないで楽しめる香味でした。

経年変化に関しては熟成なのか劣化なのか、愛好家の中でも意見が分かれるところです。

私は基本的にはストイックに飲んできた自分の舌と経験を信じることにしているので、好ましい変化を遂げると思うものが多いとは思いつつも、何でもかんでも瓶内変化で良くなると妄信するタイプでも、美味いものは未来永劫美味くあり続けると妄信するタイプでもありません。

今までは、特に瓶内で長期経過したボトルに関する知見は先人達に頼る部分が大きかったのですが、今回のようにリリース当時に丁寧に飲んで15年以上経って改めて真剣にテイスティングできるボトルが最近は増えてきました。

今回の変化には、当時酷評していただけに感慨深いものがあったのでした。
今の私が発信できる有意義な情報ってこのあたりなのかなと改めて強く感じました。

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