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モルト初心者にオススメするウイスキー・前編

モルト初心者にオススメするウイスキーについて、考えもあるのでいつかは書こうと思いつつも、結構モルト愛好家の中でも意見が分かれるところでもあるため先送りにしてきました。
とはいえ聞かれることがしばしばあるためそろそろ書いてみようと思います。
もちろん私の個人的な考えでしかありませんが、ここ数年はこの考えに変わりはありません。

まず結論から言うと、オフィシャルスタンダードの個性のあるものを、ボトル買いして飲み比べることから始めるのが良いと思っています。

ウイスキーはアクワイアードテイスト(acquired taste)、つまりは飲んでいるうちに美味しさがわかってくるものであると言われています。
これに関してはその通りだと思っています。
雷に打たれたようにハマったという人もいますが、そういう方は他のお酒を深く飲んでお酒の刺激に慣れており、フレーバーを拾うための素養がすでにある人に多いように思います。

実際、酒に関して何の素養も無い私の妻に飲ませてみることもありますが、スタンダードと伝説級のボトルの美味しさの違いなど全然わかりません。
シェリー系の香りを甘い、ピーティなものを薬臭い・煙い、くらいはわかりますが、飲んでみればすべてが辛い、とそういう具合です。
そんなたまに味見させる生活が何年も続いていますが、興味が無いせいもありますが何の進歩もありません。複雑さや奥にあるフレーバーを拾うところまで深く味わうことはできないようです。

もうひとつ例があります。
あんなに典型的な個性のあるボウモア60年代のフレーバーに関してです。
度数も40%近くまで落ちたダンカンテイラーのボウモア1966の長熟。
これは刺激も少なく特徴的なマンゴーフレーバーがあり、非常にわかりやすい陶酔感があると思い、若かりし頃の自分は、「こんなウイスキーもあるんだぞ」と驚かすつもりで、自分の結婚披露宴で希望者に振る舞いました。
ウイスキーですからある程度お酒を普段から飲む人たちを中心に飲んでいるようでしたが、ピンときた人はいなかったようです。むしろ一緒に開けた高級ワインのほうがずっと好評でした。
もちろん人生の節目に好きなボトルを開けられたのは良い思い出になりましたが、思ったよりゲストの感動はなかったようで拍子抜けした部分もありました。
ある程度飲みなれた人にとっては非常にわかりやすい突き抜けた個性・魅力であっても、ウイスキーの刺激やフレーバーに慣れていないと必ずしも拾えるものではないようです。

蒸留酒の刺激に慣れることもフレーバーを拾ううえでは不可欠ではないかと思うわけですが、そうなると刺激に慣れて美味しくなるまで飲み続けるというところが壁になってきます。
まずはモルトに対して興味があるということが大前提になりますが、興味を維持して飲み続けていくうえでお勧めなのが、飲み比べをすることです。
モルトにはいろんなタイプがありますし、美味しいかどうかは別問題にして違いに関しては早い段階で感じられると思います。それがわかると楽しくなります。
美味しいに到達するまで、違いが興味深く楽しいという理由で飲み続けられそうです。

なお、ある程度飲み込んでくると気になるようになってくる、いわゆるオフフレーバー、これに対しても最初はわからないことが多いようです。
私も最初はサルファリーもパフューミーも全然気になりませんでした。ヒネに関しては未だにわからない時があります。
ですから、なるべくオフフレーバーの無いものをというよりは、比較できる個性のあるものを選ぶ方が良いのではないかと思います。

それから、これに関しても賛否両論あると思いますが、飲み比べはBARでたくさん比べるよりボトル買いして家で数種類をじっくりやるほうが最初は良いと思います。
理由は、蒸留酒に対する慣れとベースになるボトルの香り・味わいの記憶が無ければ、ショット1杯の比較ではそれぞれの違いをしっかりと認識して記憶するには至らない可能性が高いと思うからです。
また、自分が本格的に飲み初めた頃かなり若かったということもありますが、BARに慣れるまでは落ち着いてテイスティングできなかったという苦い記憶もあります。(※最初からBARでも落ち着いてテイスティングできる人や、初心者を的確に導いてくれる良いバーテンダーさんがいる環境の人は別かもしれません。)
そしてボトル買いして家で飲むなら、感想を書き残し、次回同じものを飲む時に比較することもできます。これが意外とモチベーションになったりします。
今は、ネット上に参考にできるテイスティングノートがたくさん公開されていますし、初心者向けの書籍もあります。特にオフィシャルスタンダードボトルに関しては探せばすぐに見つかるでしょう。
腰を据えてじっくり比較しながらボトルとお付き合いして、体をウイスキーに慣らし、違いを認識し、これからたくさんテイスティングしていくうえでベースになる記憶をいくつか刻み込むのがお勧めです。
そうやってベースになるボトルを何本か作ってしまうと、それらとの比較でテイスティングノートが書けるようになり、探さなくても拾える要素が増えるので、テイスティングが安定し、無駄な時間もかからなくなり、目の前のボトルならではの特徴も捉えやすくなると思います。

後編に続きます。

 

#考えたこと #モルト初心者の方へ

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