スプリングバンクよりスプリングバンク味でした。
キルケラン KILKERRAN (Glengyle) 2004-2019 15yo OB for UK retailers to celebrate the 15th Anniversary of the opening of Glengyle Distillery 53.1%
one of 324 bottles, matured for ten years in a fresh bourbon puncheon, followed by five years in a refill bourbon hogshead
香りは華やか。しっかり蜂蜜レモン、穏やかなバニラ、こなれたモルティと淡いピート、僅かにオイリーで潮風を伴うミネラル感。
飲むと度数よりアタックは控えめでやや粘性あり、コクのある蜂蜜やオレンジマーマレードの甘味、凝縮感のあるモルティな旨味、良い塩気はしっかり、穏やかなピート、想定外に綺麗な余韻。
【Very Good,interesting】
2019年に、グレンガイル蒸留所の15周年を記念してUK国内の小売店向けにリリースされたオフィシャルボトル、キルケラン2004、15年熟成です。
以前にもお伝えしたかもしれませんが、この蒸留所はオーナーを同じくするスプリングバンクでフロアモルティングした麦芽を原料にしており、ベンヴィヴィスで使用していたポットスチルで蒸留しています。
蒸留もスプリングバンクの職人が行っているようで、恐らく使用できる樽の仕様もスプリングバンクと概ね同様ではないかと思います。
2004年ということは創業年の蒸留で、フレッシュバーボンパンチョンという恐らくバーボンバレルを組み直した珍しい樽で10年熟成させた後で、リフィルバーボンホグスヘッドで5年の後熟を経てボトリングされました。
なんだかわけのわからない樽使いですが、察するに創業したてで資金の無い時期に大きな樽で熟成させていたものを、10年経って量も減ったところで味のつきやすい樽に詰め替えたというところでしょうか。
そんな個性的なスペックではあるのですが、その中身はまさに王道のキャンベルタウンモルトでした。
上記の樽使いでバーボン系の樽感がありますが、これがうまくハマっており原酒の香味を引き立てる丁度良い効き方でした。
そして、なんといってもスプリングバンクに酷似した原酒由来の香味があり、フロアモルティングからくると思われる旨味の凝縮した深みのあるモルティさやブリニーな個性が存分に出ていました。
加えて、近年のスプリングバンクはかなりピーティで、タールや機械油のニュアンス、そして良くも悪くも雑味の多い香味があり、ともすれば飲み心地を悪くしてしまうこともあるのですが、それらが控えめで綺麗に仕上がっていました。
オバルなど、昔のスプリングバンクを彷彿とさせる香味で、これが熟成したらまさにその味になりそうだと思えたのでした。
これを私がブラインドで飲んだら、間違いなく第一にスプリングバンクと言うと思います。
スチルは違いますので、蒸留よりもそれ以前の仕込みのほうが香味に与える影響は大きいのではないか、やはりアルコール収量は落ちても「フロアモルティング⇒低度数のもろみ」が最も昔の味に近づける近道なのではないか、そう強く感じる体験でした。
このボトルは記念ボトルということもあり特に綺麗で秀逸な仕上がりですが、普通に買える12年も十分にキャンベルタウンの個性があって美味しいですし、キルケランには今後さらに注目していこうと思います。
#グレンガイル (GLENGYLE)