山崎白秋さんからいただいたテイスティングノートを掲載します。
今月のお題は、「余市」である。
余市のお題、実は二度目である。前回の前置きを記してみると
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山崎のモルトに較べると無骨で個性的なものが多く、洗練といった観点では一歩譲ると感じていた。 ところが今回の5本をテイスティングしてみて印象が変わったのである。実に綺麗で繊細、かつふくよかで深みのあるモルトと感じた。実力としてはまったく山崎に引けをとらない。
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なぜこれを引き合いに出したか、それは今回もまったく同じような印象をもったからだ。山崎に引けをとらないことを前回認識していながら、今回それを忘れていて余市の素晴らしさを再認識した次第である。
さて、今月のモルト5本を紹介しよう。
*** [No.1] SMWS 116.6 余市 バーボン樽 1987-2005 18年 54.1% ***
(香り) トップノートはスィートで爽やか。しだいにエステリーかつフルーティーな香りで満たされる。奥にはややヌカの香りがある、香りの数はたいへん多い。 しだいにピート香が強く感じられるようになる。
(味) シャープなピートで満たされる。かすかな熟成感が心地よい。味の数は多いがピートにマスキングされて、その他の味わいは非常に遠くに感じられる。
*** [No.2] オフィシャルボトル 余市蒸留所 20年貯蔵 1988年 20年 55% ***
(香り) 非常に濃いフルーツの香り、また香りの立ちも早い。その後シェリー樽由来の香りが感じられるようになる。 しだいにトースティーな香りが強くなるが、それにバランスする酸味を持ち合わす。フルーツ香はたいへん上質なもので心地よい。 さらに時間を経るとカルピスの香りも出てくる。
(味) 味はまさにシェリー樽の個性で、たいへんトースティー。基本はこげたゴムであるが、下品になる一歩手前で留まっている。あじわいは単調だ。
*** [No.3] オフィシャルボトル 余市 NIKKA SINGLE CASK MALT WHISKY Seller NO.7 cask no.112788 新樽 1987-2009 58% ***
(香り) まずトップノートから、素晴らしいと感じられる香りがたくさん飛び込んでくる。それは深みのあるウッディな香りと、上質なキャラメルの香り。 言葉からすれば、少々押し出しが強いのではと危惧されるかもしれないが、爽やかなフルーツ香と、エステリーな香りも併せ持っているので、くどくはならない。素晴らしい熟成香である。
(味) シェリー樽の個性をわずかに感じるが、それは良い意味でのものだ。熟成由来の渋みや木の含み香が素晴らしい、あじわいはたいへん複雑。たいへん美味いモルトである。
*** [No.4] オフィシャルボトル 余市 NIKKA SINGLE CASK MALT WHISKY 5th anniversary cask no.129445 新樽 1991-2008 17年 63% ***
(香り) まずシェリー樽の個性が広がる。典型的なシェリー樽の香りだが、くどくは感じられない。トースティーかつフルーティー。 ふくよかなキャラメルの香りもあり、香りの数はたいへん多い。
(味) シェリー樽の個性をわずかに感じる、香りほどシェリーは強くない。熟成由来の苦味が心地よい。 しだいにエステリーかつフルーティーな味わいとなる。
*** [No.5] オフィシャルボトル 余市 NIKKA SINGLE CASK MALT WHISKY Seller NO.15 cask no.126451 新樽 1989-2008 63% ***
(香り) トップノートはシェリー樽の香り。ウッディな熟成香が素晴らしい、奥にはしっかりとしたフルーツ香が。 香りの数は多く、エレガントな香りもあり、たいへん贅沢だ。
(味) シェリー樽由来の味わい。ピリピリ感が強い、アルコール度数が高いのかもしれないがアルコール臭さは感じられない。旨みが強く感じられる、たいへんウッディ。
#Tasting Note