山崎白秋さんからいただいたテイスティングノートを掲載します。
モルトの会、テイスティングノート
2012.2.26 スタンドバーにて
今月のお題は、「ポートエレン」である。 ポートエレン、なんて響きの良いネーミングだろう、名前で売れるモルトというのがあるのかもしれない。
女性の名前や花の名前などが付くとモルトも人気が高い、ローズバンク、クライネリッシュなんかもそうなのだろう、サイレントともなるとなおさらだ。
1985年に蒸留を止めてしまったポートエレンではあるが、ボトラーズものは豊富なようだ。ただし今後は年数も経ってくるので高額なモルトばかりになるのは残念だ。
さて、今回のテイスティングであるが、ピートが強くアイラモルトには間違い、ただそのあとが分らない。微妙なパフューム香がありボウモアという選択肢もあったが、2000年ごろに出回っていたボウモアのパフュームとは別のものであった。
そのパフュームであるが、過去ログ第78回「ポートエレン」を読み返してみると「ごく軽く化粧品」と記されており、今回と同じ印象を持っていたのには正直驚いた。ポートエレン=軽い化粧品香、いままでこんな図式を感じたことがないのである。
そんなポートエレンであるが、ピートの個性を取り除いてみると、たいへんエレガントで上品に香り、十分人気に値するモルトと感じたしだいである。
さて、そんなモルト5本を紹介しよう。
*** [No.1] ザ・ゴールデンカスク ポートエレン cask no.cm105 1982-2007 173/355 51% ***
(香り) トップノートは軽いミント。奥には金属の香りも。その後、いがいがと軽いピート香を感じるようになる。 ピートにマスキングされてはいるが、しだいにエレガントな印象が強くなってくる。
(味) 爽やかな酸味が心地よい。ベースとなるのは中程度のピート。甘さとシャープさが同居しているモルトだ。
*** [No.2] ザ・マックギボン プロブナンス ポートエレン リフィル ホッグスヘッド 1980-2006 25年 55.8% ***
(香り)トップノートはミント、次に軽いピート香。すぐに香りは開き、酸味、エレガントなフルーツ香がストレートに立ってくる。注意深くすると軽いパフューム香が感じられる。
(味) 酸味とエレガントなフルーツが印象的だが、すぐにピートにマスキングされる。たいへん濃い味わいだ。
*** [No.3] シグナトリー ポートエレン cask no.5845 1978-2002 92/264 23年 56% ***
(香り) トップノートはピート香、追ってミントの香り。しだいに酸味がアクセントとして加わる。 さらに時間をかけると、まったりとしたキャラメル香を感じるようになる。
(味) 酸味がとても美味しく感じられるモルトである。ピートは中程度に効いている。アルコール感が強いのでじっくりと楽しみたい。
*** [No.4] ザ・マックギボン プロブナンス ポートエレン 1978-2002 23年 60.9% ***
(香り) エレガントなフルーツ主体のトップノート、次に砂糖水を連想させる香りが立ってくる。単純で若く感じたり、深い香りと感じられたり、印象が定まらないモルトだ。 奥には軽いパフュームが香る、パフュームの種類は90年代ボウモアと別のものだ。
(味) 甘さと酸味の個性、やはり味でも軽くパフュームを感じる。中程度のピート、アルコール感が強い。旨みが強く味わい深いモルトだ。
*** [No.5] パール・デ・ザンジュ シグナトリー ポートエレン cask no.359 19782-2006 405/562 24年 58.7% ***
(香り) エレガントなシェリー樽由来の香り。軽いピート香、奥にはややえぐみが感じられる。時間を掛けるとシェリー樽からのものなのか、焦がし砂糖菓子の風味が広がってくる。
(味) リフィルシェリーで熟成しているのか、強くシェリーを主張していない。かなり上手くシェリー樽を使っているといえよう。 酸味もスパイスとして適切である。アルコール感はやや強い。