本日は内田百けん(けんは門に月。けんと書くのは好まないので、以降、別名である百鬼園と書く。)の命日である。
木蓮忌の由来はインターネットですぐ調べられるのでおいといて。
中学生のとき、国語の教科書で読んだ「件」が何故か頭から離れなかった。
社会に出てから、内田百鬼園作であることを突き止め、改めて読んだ。
小学生にはわけのわからない作品だったが、社会人になってから読むと、件とは偶々件であるだけの普通の、小心者の、苦悩する人間であった。
他の作品はあまり読んでいない。
ただ、10代前半から今に至るまで、10数年間も頭にこびりついて離れない作品を書いた、偉大な作家だと敬愛している。
「ねがわくば はなのもとにて はるしなむ」とは西行法師の歌。
儚く咲き誇るはなもいいが、包み込むような木蓮のはなのもとで、死ぬのもいいじゃないか、と、木蓮忌に思う。
外は晴れ。
木蓮は少し、盛りを過ぎている。
『冥土』内田百けん集成3
内田百けん著
築間書房(ちくま文庫)
ISBN(10)4-480-03763-2
#本の話