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バーで飲もう!“温故知新”篇

先日、自宅の本棚を整理していたら、1987年~1988年頃の銘酒事典や酒の話題が沢山載っている雑誌を何冊か見つけた。 
懐かしかったので読み返しているのだが、とても面白い。
当時とはボトルの形、ラベルが変わっているものが沢山あるが、何しろ違うのが掲載されている酒の数である。

スコッチ・シングルモルト・ウイスキーで言えば、ひと昔前はひとつの蒸留所が熟成年数の違いで2~3種類のボトルを出していたぐらいだったのが、現在ではボトルの熟成年数の種類も増えていれば、熟成される樽の違いでもボトリングされている。それに、記念ボトルやボトラーズ・モルトを入れると大変な種類である。

それは、モルトウイスキーに限らず、他のウイスキーやブランデー、スピリッツ、リキュール類にも同じ事が言える。種類が増え、ボトルの形が変わったり、ラベルが変わったり、価格も変わったり・・・覚えるのも大変だ。

私が昨年9月にbar Blue Santaを開店するまで6年間のブランクがあったのだが、その間に飲酒業界は大きな変貌を遂げているようだ。
今はその溝を埋めようと必死なのだが、日々変化している酒たちに追いつくのは容易ではない。

その頃の酒雑誌には日本のバーの名店や名バーテンダーを取材した記事が多く掲載されていた。
中には亡くなられた名バーテンダーも少なくないが、日本のバー業界を牽引し、バーテンダーという職業を確固たるものとしてきた先人達の言葉には重みがあり、その道を極めた者しか語ることの出来ない自由な発想と優しさがあるような気がする。(そのうち名バーテンダーの名言を紹介していきたいと思います)

話は変わるが、その酒雑誌の中でオキ・シロー氏の『バーは人なり』というコラムがあった。その中から私が感銘した文章を紹介したい。

『いい酒場には、いい酒場だけが持つ独特の匂い、空気があるようだ。世の酒飲みにとって、このいい空気を持った酒場と数多くめぐりあえることは、いい友を持つのと同じくらい幸せなことではあるまいか。

いい酒場が持ついい匂い、いい空気。 あれは一体どこからくるのか?
店の造りやインテリア、照明、音楽、酒瓶やグラス類。
こういったものも、いい雰囲気をかもし出す一因ではあるが、最大の要因はなんと言ってもバーテンダーの存在だろう。
見知らぬ人間が隣り合い、同じ空間を共有しながら酒を愉しむ場がバーであり、その空間の演出者は店主である。

酒場の扉を開けてから、そこを出るまで、客はカウンターをはさんでバーテンダーと対峙する。 酒をつくってもらい、話し相手になってもらい、場合によっては、こちらの沈黙を見守ってもらう。

いずれにしろ、その店にいる限り、ある種バーテンダーに身をゆだね、バーテンダーと時間を共有することになる。 当然、どんないい酒でもバーテンダーによって、うまくもまずくもなろうというもの・・・』 

とかく私のような未熟なバーテンダーは提供する酒の味を追求することだけに固執したり、品揃えを増やそうとして躍起になる。勿論、酒の味を追求し、求められる酒をバックバーに並べておくのはバーとして、バーテンダーの姿勢としては基本であるだろう。
しかし、一番大事なのは店の空気造りであり、いい空間を造るということがお客様にとって、“いい空間”であり、“いいバー”の条件であることを改めて知らされた文である。

この本、捨てなくてよかった。

あとがき
今回はありません。放置です鵜。

#バーテンダー

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