【ウイスキーの化学:アイラモルトの秘密②】
昨日は2-メトキシフェノール=グアイアコールをご紹介しました。
前回少々説明が足りなかった点について。
最近のポートシャーロットに見られるようなヘビーピートモルト、リリース時によく公開される「フェノール値:ppm」というのがありますが、これは焚きこんだときに測定したものであって、ニューポッドにどのくらい残存したのか、ボトリング時にどのぐらい残存したのかは明確になっていません
。
最高でも焚きこんだときのPPMまでだという判断材料とするしかないでしょうね。
さて今回は2-エチルフェノール
をご紹介します。
香りといいますか臭いとしては 「タール 馬小屋 皮 腐敗 ペット臭」などと例えられる通常であれば嫌がられる要素なのですが、
これが少量ウイスキーに含まれると不思議なことに「やみつき」になる個性となるんです。
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繰り返しになりますがもちろん全くエチルフェノールに対して良いイメージを刻む記憶がないのであれば、本能的に嫌悪する臭いです。
しかしながら以前からお話させていただいているとおり、アルコール自体がドーパミン放出促進要素ですから、エチルフェノールの要素があるモルトを繰り返し飲み、記憶が「楽しい記憶」と整理されていけば、条件反射で「これは美味しい香り」だとイメージが昇華していくわけです。
ただそれだけではなく、少々私見が入ってしまうのですが、いわゆる「ダシ」による「うまみ」を題材にしますと(わかりやすいところでラーメン)、ダシを採るそのもの(材料)を直に匂ってみると生臭かったり決していいイメージではないことが多々あります。でもそれが多少残存する完成形となった後に脂だったり、肉だったり、人間に快楽を与える要素と一緒に味わうと、これがたまらなくうまく感じてしまうのです。多少嫌な要素があった上で結果満たされる記憶は、全てが完璧に好印象な記憶よりも、深く刻まれるというべきでしょうか。
アイラモルトがまさにその現象を体現しているように思います。一度好きになれば少々重いと感じることはあっても、毎回進んで飲もうとは思わなくても、ふとしたことでまた飲んでみたくなる。ピート自体を嗅いだことの人も多いと思いますが、決して好ましい臭いではないですね。
まさしくラーメンと同じような感覚です。脂がアルコールに置き代わったような感じといいますか。。。
食べ物もウイスキーも、テイスティングノートを書けば多数のフレーバーが列記できます。でもあくまでトータルで味わうのだということなんですね
。その中にかえって一見マイナスと取れる要素があったほうが、ギャップがあったほうが情が移ると。
#ウイスキーの化学