【ウイスキーの化学:アイラモルトの秘密①】
そろそろ核心に入っていきたいと思います。
よくウイスキーの本に解説がありますので簡単に説明しますが、ウイスキー製造における発酵というのは大麦の種の中のデンプン(グルコース=ブドウ糖が1000個単位重合して出来ている)を微生物である酵母によってアルコールに変える作業のことです。酵母はデンプンの状態では分解することができません。しかしウイスキーの原料である二条大麦はデンプンを含んでいる上、自らデンプンを分解する酵素までも作り出すことができます。この酵素によって単糖であるグルコース、二糖であるマルトースの状態まで分解されると、酵母はこれらを取り込みアルコールを産生できるというわけです。
そのような理由でデンプンを分解する酵素を得るために大麦をわざと発芽させるのですが、そのまま放置すると自らのデンプンを自らの酵素で消費してしまうため、採れるアルコールが少なくなってしまいます。ですので幼芽のうちに発芽を止めるのです。
そこで利用されるのが「ピート」ということになりますが、ピートの仕様により麦芽にいわゆる「スモーキーフレーバー」が付きます。
ではスモーキーフレーバーの原因物質は何でしょう? ***ピートのみならず樽からもたらされる場合もあります。
【2-メトキシフェノール=グアイアコール】:焦げたような、煙のような臭い 焙煎したコーヒー豆にも含まれる。
グアイアコール | |
---|---|
IUPAC名 |
グアイアコール(許容慣用名) |
別名 |
グアヤコール |
分子式 |
C7H8O2 |
分子量 |
124.13 g/mol |
CAS登録番号 |
[90-05-1] |
形状 |
無色または淡黄色の固体または液体 |
密度と相 |
1.112 g/cm3, |
融点 |
28 °C |
沸点 |
204-206 °C |
SMILES |
COc1ccccc1O |
グアイアコール (guaiacol) とは、有機化合物の一種で、示性式は
2-CH3C6H4OH
と表されるフェノール類。グアヤコールとも呼ばれる。
バニリン(香料)、グアヤコールスルホン酸カリウム(医薬)などを人工合成する際の原料とされ、虫歯の治療時には歯髄神経の麻痺・消毒に用いられる。正露丸の主剤である日局クレオソートに多く含まれる[1]。
ユソウボク(Guaiacum sp.)から発見されたことにより命名された。ユソウボク及び日局クレオソートから製造されるが、後者の場合はリグニンの熱分解により生じる。
誤って口内粘膜にふれた場合は即時に洗浄する。現在はあまり使われなくなり、他の薬が使われることが多くなっている。刺激性・毒性があり、成人致死量は3-10グラム[1]。
**実はバニラの香りを作る過程でグアイアコールの合成を含む工程があります。「ライマー・チーマン反応」といいます。
→グアイアコールをホルミル化してグアイアコールバニリンを合成
→バニリン (vanillin) は分子式 C8H8O3
で表される有機化合物で、バニラの香りの主要な成分
つまりはバニラの香りと焦げたような香りは隣り合わせということですね。
微量であれば問題はないと思うのですが、やはり量が過ぎると成分的には人体に悪影響を及ぼしそうです。最近の強烈なピート合戦は。。。
続く
#ウイスキーの化学