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【ウイスキーの化学:おいしさの4分類】

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【ウイスキーの化学:おいしさの4分類】

農学博士の伏木先生によると、おいしさの要因は4つに分類できるといいます。

①生理的欲求に基づくおいしさ

空腹・渇き・栄養素のアンバランスや欠乏、疲労など生理的状態に起因するおいしさ

→栄養素を適切に摂取した報酬として本能的快感が得られる

→特製の必須アミノ酸を欠いた食物を動物が本能的に嫌がる

→人間は他の動物と比較すると特定の栄養素の欲求を明確に感じる能力が減退している、しかし欠乏する栄養素を摂取できた時の満足感は感じられる。

運動により「甘み・酸味嗜好性」が増強する→脳内に蓄積するTGF-β(*)が関与することが示唆されている

疲労によって「酸味」の欲求が高まる→運動によって疲労させた動物はクエン酸を好む→クエン酸サイクルに即利用可能なため→ミトコンドリア膜を通過しづらいリンゴ酸は逆に好まない

 *TGF-β(transforming growth
factor-β)

 TGF-βは、血小板、胎盤、肺、脾、骨髄、脳、臍帯などから、産生される。
 TGFには、TGF-αと、TGF-βとが、存在する。TGF-βには、TGF-β1~TGF-β2の5種類が存在する。TGF-β1は、免疫細胞が産生する。
 TGF-βは、主に免疫抑制的に作用する、抗炎症サイトカイン:TGF-β1は、リンパ球(T細胞やB細胞)の増殖・分化を抑制する。TGF-β1は、NK細胞活性を抑制する。その結果、免疫応答、炎症反応、造血が、抑制される。
 TGF-βは、多くの組織で、細胞外基質蛋白を産生し、分解酵素を抑制し、創傷治癒を促進する。
 TGF-βは、上皮細胞や血管内皮細胞の増殖や新生を促進する。  
 TGF-βは、単球からのTNF-α産生、IFN-γの産生を抑制する。

 命名  主な産生細胞  主な標的細胞  主な作用
 IL-1  単核食細胞(Mφ)、B細胞  リンパ球、肝細胞  結合組織系細胞のPGE2産生、T細胞のIL-2産生、肝細胞のCRP産生、発熱
 IL-2  T細胞(Th1細胞)、NK細胞  T細胞  T細胞の増殖とサイトカイン産生、NK細胞の増殖・分化・活性化
 IL-4  T細胞(Th2細胞)、NKT細胞  B細胞  B細胞の分化・増殖、IgE・IgG1産生、Th2細胞への分化
 IL-5  T細胞(Th2細胞)、肥満細胞  B細胞、好酸球  B細胞の分化・増殖(IgM・IgA・IgG3産生)、好酸球の増殖・分化・活性化・遊走
 IL-6  単核食細胞、血管内皮細胞  B細胞、肝細胞  B細胞や形質細胞の増殖(Ig産生)、肝細胞のCRP産生、発熱
 IL-10  T細胞(Th2細胞)、Mφ  T細胞(Th1細胞)  IFN-γ産生を抑制、MφのIL-1産生を抑制、T細胞のMHCクラスII分子発現を抑制 
 IL-12  Mφ、樹状細胞、B細胞  NK細胞、T細胞(Th0細胞)  NK細胞・NKT細胞を刺激しIFN-γ産生、Th0細胞からTh1細胞への分化を誘導
 IL-13  T細胞(Th2細胞)、NK細胞  B細胞、Mφ  B細胞の分化・増殖、Mφの炎症性サイトカイン産生を抑制しMHCクラスII分子を発現
 IL-15  単核食細胞(Mφ)  BK細胞、T細胞、B細胞、Mφ   IL-2と同じくNK細胞の増殖・分化・活性化、記憶T細胞の維持、骨破壊
 IL-17  活性化記憶T細胞  好中球、内皮細胞、線維芽細胞  好中球の遊走、局所の炎症、線維芽細胞などによるサイトカイン産生
 IL-18  Mφ、肝クッパー細胞  Th1細胞、B細胞、NK細胞、Mφ  IL-2と共にT細胞からIL-4を産生(Th2細胞へ分化)、IgE産生、血管新生、
 IFN-α  単核食細胞(Mφ)、好中球  組織細胞、NK細胞  ウイルス複製の阻害、MHCクラスI分子を発現、2,5-AS産生、
 IFN-β  線維芽細胞  組織細胞、NK細胞  ウイルス複製の阻害、MHCクラスI分子を発現、2,5-AS産生、IL-6と同じ作用
 IFN-γ  Th1細胞、CTL、NK細胞  組織細胞、NK細胞  MφとNK細胞の活性化、MHCクラスI・II分子を発現、IgE抗体産生を抑制、発熱
 TNF-α  Mφ、NK細胞、T細胞  T細胞、NK細胞、Mφ  腫瘍細胞を障害、局所の炎症を誘導、血管新生、IL-1、CRP産生、発熱
 TNF-β  Th1細胞  T細胞、B細胞  腫瘍細胞を障害、局所の炎症を誘導、血管新生、単核食細胞活性化、NO産生
 TGF-β  CD4T細胞、Mφ、血小板  T細胞、B細胞、Mφ  B細胞の増殖やIg産生抑制、線維芽細胞の増殖、創傷治癒の促進


 

②文化に合致したおいしさ

民族や地域、あるいは家庭など小規模なものも含む

→集団に所属している人間の慣れ親しんだ味は安心感を与え、文化に合致するものにおいしさを感じさせる

→味覚や風味が食の安全の信号であることを考えると、食嗜好は保守的であるといえる

→日本人が好む海苔の風味は欧米人にとって「気味の悪いまずい味覚」である

→しかしながら異文化の風味を求めるモーメントは常に存在している 

③情報のリードするおいしさ

人間やサルでは大脳が発達し、おいしさにかかわる情報処理機構が発達している。ラットでは舌から到達した信号はその安全性や栄養価値が直接的に判断されるが、サルやおそらく人間ではこの価値判断の前に味覚以外の情報が大きく関与するとされる。食べものに関連する視覚情報や匂いなどさまざまな情報が脳に集められ、味から得た情報とすりあわされ、最終的な価値判断が行われると考えられている。

→視覚などから得た期待と大きく異なる味覚は警戒感となり、おいしさを減退させる

→食の安全性のみならず、食を楽しむための摂取に至るまで、情報は大きな影響を与える

④薬理学的な執着のおいしさ

純粋な油脂には味も匂いもないが、食品のおいしさに油脂が重要な要因を与えることは経験的に知られている。油脂に対する嗜好性はラットを用いた長期の実験においても減退せず、むしろ強化された。

油脂に対する執着にはドーパミンD1受容体の関与が示唆された→ラットをコーン油を自由に摂取できる環境に置き、ドーパミンD1受容体拮抗薬を投与すると執着がなくなり、D2受容体拮抗薬では変わりがなかった

ウイスキーにおいても、他のどのような食べ物飲み物であっても、おいしさはこれらの分類のどれかに当てはまると。

おいしいウイスキーとはなにか。

ウイスキーの製造法が具現できる範囲で、究極においしいものはどうやって作ることができるか。

今後解析可能なフレーバー1つ1つを化学物質として同定し、反応過程まで突きとめていければと思います。

#ウイスキーの化学

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