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ウイスキーの化学 第1回

 
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【 ウイスキーの化学 うまいウイスキーとは何か? 第1回 】

理想のBARについても一段落し、そろそろ次のアプローチを考えていた今日この頃でしたが、ひとつ面白い出来事を体験しました。

(初回なのでちょっと遠回り。スミマセン)

恥ずかしい話、私は17歳からの18年間、「1日たりともタバコを吸わなかったことがありませんでした」

23の時、扁桃腺を切除する手術をした際も、隠れて吸いました。

まだ高校生の時、右足全体をギブスで固定しても、慣れない松葉づえで高校から30分かけて橋を渡り、河川敷で吸いました。

そして1度たりとも禁煙したことはありませんでした。初回に測定した一酸化炭素濃度から算出すると1日40本吸っていたことになります。

私は薬剤師なので、ニコチンがどのような作用を及ぼすのか、机上の知識としては把握しており。。。というのは

脳は元々、自然な形で神経伝達物質を放出し、情動をコントロールしているが、

タバコに含まれるニコチンは主に中枢神経および末梢に存在するニコチン性アセチルコリン受容体
(nAChR) に作用することで薬理作用を表すと考えられている。

中枢神経において nAChR
は広範囲に分布しているため、ニコチンは脳の広い範囲に影響を与える。

そのうち、特に依存性の形成に関与する部位として中脳辺縁系のドパミン神経系が挙げられる。中脳の腹側被蓋野、側座核などの
nAChR
にニコチンが結合すると、直接的あるいはグルタミン酸の放出を介してドパミン系神経の脱抑制を起こす。このドパミン神経系は「報酬系回路」として知られており、快の感覚を個体に与えるため、強化行動をひき起こす。
この中脳辺縁系のドパミン神経の興奮を介した依存性の形成メカニズムは他の依存性薬物(コカイン、ヘロイン、アンフェタミンなど)と同じとされるが半数致死量の低さと他細胞系への薬理作用の点から、麻薬とはされておらず、毒物に指定されている。末梢においては、中枢神経からの間接的な作用と、末梢の
nAChR
に作用することで毛細血管を収縮させ血圧を上昇させる、縮瞳、悪心、嘔吐、下痢などをひきおこす。中毒性があり、通常量でも頭痛・心臓障害・不眠・苛立ちを感じるなどの症状、過量投与では嘔吐、振戦、痙攣、死亡を起こす。ニコチンは体内で急速に代謝され、コチニンとなって主に尿中から排泄される。ニコチンの血中半減期が20~30分であるのに対しコチニンの血中半減期は30時間以上と長いが、コチニン自体に毒性はない。(この長い半減期の差を利用して喫煙者(受動喫煙含む)・非喫煙者の判別テストなどが行われる)

参考:http://ja.wikipedia.org/wiki/ニコチン

そして、ニコチン摂取が習慣化すると、脳がそれ以前のようには神経伝達物質を放出してくれなくなるばかりか、自らは刺激に慣れ満足するためにより大量の神経伝達物質を欲するようになってしまうのです。
短絡的には煙草をより多く吸っていくしかなくなります。これぞ中毒です。ただもう一方、素では厳しい離脱症状がおこるものの依存性を断ち切るという選択がもっともふさわしいというわけです。

ドーパミン(英:
Dopamine)は、中枢神経系に存在する神経伝達物質で、アドレナリン、ノルアドレナリンの前駆体でもある。

運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習などに関わる。セロトニン、ノルアドレナリン、アドレナリン、ヒスタミン、ドーパミンを総称してモノアミン神経伝達物質と呼ぶ。

またドーパミンは、ノルアドレナリン、アドレナリンと共にカテコール基をもつためカテコールアミンとも総称される。医学・医療分野では日本語表記をドパミンとしているので注意[1]。

統合失調症の陽性症状(幻覚・妄想など)は基底核や中脳辺縁系ニューロンのドーパミン過剰によって生じるという仮説がある。覚醒剤はドーパミン作動性に作用するため、中毒症状は統合失調症に類似する。強迫性障害、トゥレット障害、注意欠陥多動性障害(ADHD)においてもドーパミン機能の異常が示唆されている。

一方、パーキンソン病では黒質線条体のドーパミン神経が減少し筋固縮、振戦、無動などの運動症状が起こる。また抗精神病薬などドーパミン遮断薬の副作用としてパーキンソン症状が起こることがある。

中脳皮質系ドーパミン神経は、とくに前頭葉に分布するものが報酬系などに関与し、意欲、動機、学習などに重要な役割を担っていると言われている。陰性症状の強い統合失調症患者や、一部のうつ病では前頭葉を中心としてドーパミンD1の機能が低下しているという仮説がある。

下垂体漏斗系においてドーパミンはプロラクチンなどの分泌抑制因子として働く。そのためドーパミン作動薬は高プロラクチン血症の治療薬として使用され、逆にドーパミン遮断薬は副作用として高プロラクチン血症を誘発する。

セロトニンはヒトを含む動植物に一般的に含まれる化学物質で、トリプトファンから生合成される。

人体中には約10ミリグラムのセロトニンが存在しており、そのうちの90%は小腸の粘膜にあるクロム親和細胞(EC細胞とも呼ばれる)内にある。クロム親和細胞はセロトニンを合成する能力を持っており、ここで合成されたセロトニンは腸などの筋肉に作用し、消化管の運動に大きく関係している。

ここで合成されたセロトニンの一部(総量の約8%)は血小板に取り込まれ、血中で必要に応じて用いられる。

残りの2%のセロトニンは中枢神経系にあり、これらが人間の精神活動に大きく影響している。日常生活から、うつ病や神経症などの精神疾患(無論全てではない)に至るまでセロトニンの影響が注目されるようになり、近年では、セロトニン系に作用する薬物を用いることによって、これらの疾病を治療することができるようになった。主な薬物に
SSRI や SNRI
があり、両者共シナプスから放出されたセロトニンの再吸収を阻害する事により、症状を改善する。片頭痛の原因の一つとして知られている(過剰分泌により発症すると見られている)。
日本ではセロトニンはその効果の大きさから、疑似科学や代替医療の用語としてもしばしば登場する。幻覚を起こすリゼルギン酸ジエチルアミド
(LSD) はセロトニンの作用を阻害する。

結局、煙草を吸い続けていないと、満足した精神状況でいられなくなるわけです。

そしてここからが本題なのですが、昨年ファイザー社から発売されすこぶる評判のいい「チャンピックス」という禁煙補助剤を、かなりうがった視点ではあったのですが試してみるかということにしたのです。

このチャンピックス、施設基準を満たした病院で「禁煙宣言書」にサインすることを前提に健康保険が適用になります。

まあ禁煙してみることには変わりはないので、さくっとサイン。

さっそく服用してみました。

チャンピックス

参考:http://sugu-kinen.jp/

【働き】

禁煙に伴うイライラ、気分の落ち込み、集中できないといった離脱症状をおさえ、タバコに対する欲求を軽減します。さらに、喫煙による満足感を抑制し、喫煙願望を弱めます。これらの作用から、禁煙が楽にでき成功率も高まります。

【薬理】

喫煙の快感は、ニコチンによるドパミン放出によると考えられています。この薬は、脳内のニコチン受容体(α4β2ニコチン受容体)と強く結合し、ニコチンの結合を妨げます。そして、受容体への刺激作用と拮抗作用の2つの作用を示します。

刺激作用は部分的でニコチンそのものより弱いです。ニコチン受容体を軽く刺激することで少量のドパミンを放出させ、禁煙に伴う離脱症状やタバコに対する欲求を軽減します。ドーパミンの放出量は、ニコチンの半分くらいです。

拮抗作用は、文字通りニコチンと拮抗し、その作用を弱めます。ニコチンによるドパミン放出が抑制されるので、禁煙中にタバコを吸っても今ひとつスッキリせず、喫煙による満足感が得られにくくなるというわけです。

試してみると意外にタバコを吸わないことは難しくありませんでした。

本当に驚きました。

これまで煙が好きだとか、煙を嚥下する行為が好きなのだとか、喫煙行為自体を神聖化してきた部分も正直ありましたが、その意識はあっさり反転されます。

単純にニコチンが欲しかったのです。

なぜなら、煙を吸いたいとか喫煙行為をしなければ耐えられないのなら我慢できないはずだからです。チャンピックスの作用機序上そこまでフォローはしてくれません。あくまでニコチンがくっ付くと満足感を覚える神経伝達物質の放出スイッチをふさぎ、ニコチンが入ってこなくても半量程度の神経伝達物質が出続けるように仕向けているだけなのです。結局ニコチンが原因物質だったのです。(私もそうでしたが喫煙者は案外この点を誤解しているかもしれません)

それを実感として手に取るように理解し、最も深く感銘した体験は、

チャンピックス服用12日目、たいして吸いたくもないのに試しに1本吸ってみた」ときのことです。(オススメできません)

まったく神経伝達物質が放出された気がしないのです。(そういうための薬です)

全然おいしくもなければ、煙を吸い込んでもまったくうれしくもない、落ち着きもしない、ただ煙の存在と圧力を認識しただけの体験です。

頭にヘルメットをかぶせられて、小石が当たるぐらいの感覚です。ビールと思って飲んだら、誰かに気の抜けたノンアルコールビールに変えられていたみたいなものでした。

私はその後も深く、自らの体で実験・考察をしながら、「原因物質、受容体、神経伝達物質」の存在を実感する日々を送りました。

そしてそれは煙草の枠を超えて、食品にそしてもちろんウイスキーに、さらには人間関係にも及ぶようになったのです。

続く

#ウイスキーの化学

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