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としつきの早さ

先日、まだ早い時間。
まだ誰もいないカウンターの中、久々に夫婦でお客様のご来店を待っていました。

ふと店の入り口に目を向けると、扉が開く音と共に暗い店内の壁に外の灯りが差し込んきました。

中に入ってきた男性は、この上ない笑顔で丁寧に挨拶を僕たちにしてくれました。

その顔は、僕たちにとって懐かしい顔。

忘れようのない、笑顔と白い歯。

すこし照れながらの挨拶は、昔と変わっていなかった。

「こんばんは! お久しぶりです」

僕たち夫婦は、すぐに驚きの声をあげた。

「お〜!久々だね〜!」

礼儀よくカウンターに座ろうとしていない若い男性は、懐かしい笑顔をまた僕たちに見せてくれた。

「浜松で、友達の結婚式があったので静岡まで足を伸ばしましたんです!」

そう僕たちに告げた彼は、NO'AGE開店当初である袋井市時代の私がはじめて雇うことが出来たアルバイトのH君でした。

彼がこのカウンターの中に入っていたのは、まだ袋井市にある静岡理工科大に通っている頃。もうかれこれ10年以上は経つ事になる。

そんな彼は大学を卒業し愛知で就職をして、袋井を離れた後も静岡市へ移転をする時のNO'AGE袋井時代の最後の夜に、わざわざ愛知から駆けつけてくれた。

そんな律儀で義理を欠かない奴。

そんな彼から数年前に結婚をするという連絡をもらった時は懐かしくもあり、本当に嬉しく思った。

H君がカウンターに座り、まだ他にお客様がいない店内で僕たちはお互いの近況報告と、懐かしい当時のお客様達の話で盛り上がりました。

ふと彼の奥様の写真を見た事が無かった事を告げると、照れ笑いをしながらも白い歯を見せながら嬉しそうに結婚式の試着の時にスマートフォンで撮った奥さんの写真を僕たちに見せてくれた。

画像の中には、ウェディングドレスを着た可愛い奥様。
僕たちの印象では、可愛らしい顔をしているけど芯がしっかりとしていそうな良妻だと感じた事を彼に伝えると、また嬉しそうに「そうなんですよ」と照れながら僕たちにのろけた。

本当にいい方と出会えたんだなと、手に取るように分かる笑顔で僕たちに奥様との事を話してくれた。
そして、もうひとつ報告があるという彼が、僕たちに告げた事はいま奥様のお腹には8ヶ月の赤ちゃんがいるという事だった。

こんなに嬉しい事がこの年末にあるなんて思ってもいなかった私たちにとって、少し早いクリスマスプレゼントを貰えたような気がする。

彼と出会ってから11年。
彼も来月30歳になるという。

20歳の頃を知る私にとっては、彼の成長を嬉しく感じ終始目を細めるばかりでした。
私は当時このカウンターの中に入ってくれた子達に、なにも出来なかったと今でも反省をする事ばかりだが、こうやって変わる事無く私を慕ってくれる事は本当に涙が出るほどに嬉しい事。

お店を続けてきて良かったなと感じる瞬間は、いくつもありますが、NO'AGEのカウンターの中に入ってくれた若い子達の事は、いつまでも忘れる事はないでしょう。

H君、これからも親となり新しい家族の大黒柱として頑張ってください。

陰ながら、応援させて頂きます。

 

#バーテンダーの独り言

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