世の中のモルト好き達が外出できず「Stay At Home」で鬱々としている中、美味しいモルトを飲んで感想を共有しようという素敵な方の企画があり、私にもお声掛けいただきました。
一方的にいただくのはポリシーに反するので、私からも何かお送りしようと思っていますが、このクラスはなかなかないのでどうしようか悩み中です。
今回テイスティングさせていただいたモルトは以下の5種類で、このブログでテイスティングノートと感想を紹介するようご依頼いただきましたので、私が個人的に好みだった順番でご紹介します。
・Ardbeg 1976-1999 OB Manager's Choice 56%
リッチで深く少し古いシェリー感を伴う。70年代アードベッグらしいクレゾールや金属のニュアンスがあり、砂利っぽさや十分なスモーク、腐葉土やきのこのようなアーシー。煮詰め過ぎた林檎ジャム、バーベキューソースで焼いた肉、少しシナモンロール、リッチで少しオイリー、十分なボディが残っておりリッチな余韻も長い。
濃縮感がありパワフルだが、度数よりは穏やかで経年変化で出てきたと思われるまったりしたテクスチャーがあった。シェリーカスクの傑作アードベッグらしく、樽の温かさと原酒の冷たさが共に主張するのに不思議に一体化している。
・Bowmore 1966-2007 Duncan Taylor Peerless 44.5%
マンゴーやパッションフルーツのような強烈なトロピカルフルーツ、グレープフルーツのわた、プレーンだが長期熟成らしい樽感、淡いスモーク。
儚さはあるがピアレスとしては度数と厚みもあり、ほのかな優しい甘みと引き締める樽の渋味、突き抜けたフルーツと淡いピートが余韻に残る。
・Longmorn 1964-2000 James McArthur Millennium 57.5%
突き抜けた多彩なフルーティ、グレープフルーツのわた、白ブドウ、桃、少しミントやカモミールティー、わずかに古いピート。オールド感は強まっており全体に儚いが、樽も強くなくナチュラルで、フルーティな甘味と酸味も含めて全体に品がある。
このヴィンテージのロングモーンには傑作が多いが、これもそのひとつ。
・Laphroaig 1992-2017 25yo OB for Allen Chen 54.2%
パッションフルーツ系のトロピカルフルーツにパイナップルやグレープフルーツなど、ラフロイグの良いフルーツ感が近年のものとしては特に強く出ている。同時に近年ラフのバーボンバレルに感じがちな炭っぽさを伴う樽感が原酒の強いヨードやスモークと共に主張してくる。
高級なベーコンのような旨味があり、ボディもある。上等なラフロイグらしい、フルーティでピーティでオイリーな余韻。
・Port Ellen 1983-2006 Daglas Laing 56.7%
凝縮感のあるシトラス、乾いた草とそれを燻したようなスモーク。少し粉っぽく凝縮した噛み応えのある麦芽の旨味と柑橘の酸味、草っぽさ、そしてスモークと塩気もしっかり。
度数のわりには少し抜け感もあるが、クリアで凝縮した旨味が好印象。
好みの順番をお伝えすることすら無粋に感じるほど素晴らしいものばかりで、いろいろな意味でこのご時世になかなか感じることのできないドキドキするような陶酔感がありました。
同時に、過去に経験のある古いボトルは以前よりも瓶内変化が進んで儚さを帯びてきた印象があり、自分のストックも今回のボトルのように飲み頃感のあるうちに開けたほうが良さそうだという危機感を持ちました。
昔の好みだと強烈なフルーティさが魅力のボウモアやロングモーンが圧倒的に好みだったと思いますが、今は瓶内変化を含めた熟成感も適度で迫力のあるボディがしっかり残ったマネチョのアードベッグがより美味しく感じました。
なお、台湾向けのラフロイグは話題になったのにちゃんと飲むことができていなかった1本で、昔のラフロイグの味という噂でしたが、私は個人的には良い意味で古酒っぽさよりも長めの樽熟成を経た近年の味という印象を持ちました。
仕事のストレスも多く、いろんな意味でBarで飲むこともままならないこの現状で、鬱々とした気持ちが解放されるような素晴らしい時間を過ごさせていただきました。
企画してくださった方に心から感謝いたします。ありがとうございました。
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