【豆】ラフロイグの独特な香りや味はどうして生まれるのだろう? 第三回
ラフロイグといえば「愛せよ されば 憎めよ」というぐらい個性の強いモルト。
その香りとフレーバーの原因を探ってみたいと思います。
第一回はピート。
第二回は蒸留過程の特徴をご紹介しました。
第三回は。。。
ラフロイグ蒸留所は1815年、ジョンストン一族によって創業されました。そして一族最後の経営者が「イアン・ハンター」です。
彼は1908年蒸留所の経営を引き継ぎましたが、見事なまでの完璧主義者だったといいます。「No half measures」つまり「中途半端は認めない」がポリシーでした。
ラフロイグの生産工程の全てに基準を設け、雇用者に自ら手本を示しながら作業を徹底。今でも蒸留所には彼の幽霊が出るといわれているぐらい、そのポリシーが貫かれています。
そしてそのハンターが認めたのがグラスゴー大学出身の才女「ベッシー・ウイリアムソン」。ハンターは彼女に自らのノウハウ全てを注ぎ込み、娘のように可愛がりました。1954年に彼が亡くなった際に、蒸留所の権利をベッシーに譲るまでにいたります。
この過程で、第二次世界大戦の前、禁酒法制下のアメリカにおいて「薬用」として輸出できるまでにラフロイグの品質は認められていました。
ベッシーはハンターの気持ちに背くことなく生産を続けましたが、戦後の黎明期、シェリー樽やポート樽の確保に貧窮します。そこでバーボン樽を試したところ非常に相性が良かった。彼女は「バーボン樽以外は使わない」というほどその味に惚れ込んだといいます。のち樽の供給が安定するとともにバーボン以外も再び使うようになりますが、現代のラフロイグのハウススタイルは彼女が築いたといっても過言ではありません。内外で尊敬を集めた彼女は英国皇室とも親交を持ち、ウイスキーの蒸留所としては初めて英国王室御用達となりました。
ラフロイグの熟成庫は直接海に面した所に建っており、常に海水の影響を受けた空気が流れ込みます。逆に仕込み水は蒸留所から1.5マイルほど離れた丘、キルブライト・ダムという天然の貯水池のものを使っており(サーネイグ川とも呼ばれる)、この池では地質上水が素早く濾過されて地表に出るため、柔らかな味わいになるといいます。
これらの全ての要素が絶妙のバランスとなってラフロイグは独特の個性を持つモルトに仕上がっているんですね。
【参考:キルブライト・ダムの水】
#ラフロイグ