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理想のBARとは? それは可能か? 第2回



KING”S RANSOM 12年 43度 80年代

BARレモン・ハートのマスターでも入手できなかった幻のウイスキー。
(18巻)

キングス・ランサムとは、「王様の身代金」という意。現在は生産されていない。

主要原酒はエドラダワーで、
イギリス,ヨーロッパの各王室御用達、
アメリカのホワイトハウスにも必ずあったという一品。
ポツダム会議の晩餐会には、ただ一種のウイスキーとして提供された。

→今はわりとよく見かけます。

 

**最終稿 8/12 1:03

 

「理想のBARとは?」

「毎週通えて、満足できる5杯を提供してくれるBARです。」

 

第一回でそんなお話をさせてもらいました。

 

私も理想のBARを追い求めて、かなりのお店を周りました。

そんな中で、今回はちょっと申し訳ないのですが、実体験に基づく残念なお店の状況をご紹介します。

 

①バックバーを見ると、ボトルの購入価格の平均がすぐわかってしまう。しかも低い。

 

カクテル中心のお店ならば自然にカクテルに集約されていく効果もありますから特に問題ないと思うのですが、うちはシングルモルト

に力を入れてます!というお店でも結構ありますね。平均1万円前後のボトルで、チャージを入れて1ショット千数百円~2000円

となると閉口してしまうし、カクテルはやりたくなさそう。なにもあえてここのお店でなくても。。。シングルモルトに力を入れている理由は??

そんな気分になってしまいます。

 

どうせわからないだろうの時代は終わりました。

 

お酒を飲んだら、自然と他人のインプレッションも気になるもの。「どんなボトルだろう?」とネットで検索して理解を深めている人が多い

ですし、現状買えるとなると自然に価格も目に入ります。今ポチれば自分でも買えるものが、BARでの価格は10分の1の法則

(もっと酷なレートのお店もあります)ではちょっと厳しい。どんなにいい雰囲気や内装であっても。

 

家飲み人口が増え続けている原因の一つかもしれません。

 

どんな商売でも、直接消費者に販売をする立場での物品の利益率は40%あったら夢のような時代です。しかも今のご時世では、

回転率を上げていくことがなによりで、数か月に1度よりも毎月、毎週楽しめるほうが、お店にとっても次々新しい選択を提供

できることにもなりますし、回数を重ねることがお店の正しい評判につながります。お客にとってもボトルの抜栓後時間が経ちすぎて

丸くなったものは飲みたくないですし、選択肢が広がることはそれはとてもうれしいことです。

 

私は現行ボトルも必要だとは思いますが、バックバーの主流になる必要はないと思います。せめて現行ならば発売前とか、1本3万円以上

とかなかなか素人では無理というボトルに限定したほうが感じがいい。そこで初めて10分の1の法則で価格に納得がいくのです。

 

それに何よりあれも飲んでみたいと探究心をくすぐられます。

 

バックバーの主流はもう終売になり手に入らないもの。以前300本限定だったものが、今は各国の需要もあって120本前後のリリース

になっていますのであっという間に売り切れると思います。そういったものが望ましいですね。普通では手に入らない、これが必要です。

 

在庫抱えて大変だろと。気持ちはわかりますが、BARでのお酒はゆとりと探究心。居酒屋ではありません。なにより余裕のないことが

伝わってくるようなお店では満足を得られないですし、お店としてもそのままではいつまでたっても他店との差別化は図れません。

これではお客さんからも選ばれなくなってしまいます。

 

バーテンダーさんがこれはいいと思ったものを、あえて複数仕入れてストックする。このローテーションです。

 

最初は大変だと思いますが、バックバーをこの法則で徐々に塗り替えて、私も意見を言わせてもらったりボトルを供給して、いまや名店と

いわれているところが複数あります。

 

これを乗り越えると、不思議な現象に気づきます。

 

「今日はモルト3杯で。」

「お勧めいただけますか?」

 

かなりな飲み手を相手にしても、銘柄を指定されることが少なくなるのです。これこそバーテンダーの醍醐味であり、ボトルコントロール

が可能となります。そしてお客からいついつ飲んだあれは目茶苦茶美味しかったなどと無いものねだりされることが激減します。

理由は信頼が生まれることはもちろん、単純にバックバーにあるボトルのことを良く覚えていないし、同時期に他店で見ないのでわからないからです。

そしてそういった飲み手は飲みたいものが出てくる限りリピートします。

 

前述のバックバーでは売れ線から片っ端になくなっていき、飲むものがなくなってお客が来なくなり、売れ残りばかりになっても

次のボトルを開けられなくなってしまいます。この現象についてはまたお話します。

 

 

やはり量よりも質です。都内の最繁盛店舗であっても、ボトル数は座席数X50でいっぱいいっぱいでしょう。それ以上では

最善の状態で提供できないと思います。

 

市場価格1万円のボトルが、1ショット1200円。市場価格3万円のものが2800円(高くてあまり出ないから少し安くなることが多い)

ではどちらを選びますか? 私は断然後者です。

 

しかしながらそこには1ショットの量のマジックが介在することがあります。これについてはまた次回以降に。

 

 

②開けない(かなり高額な値付けで実態飲めない)ボトルが飾ってある。 ラベル酔い。

 

いわゆる「ラベル酔い」の一つです。いいマッカランを飲もうっていうお客さんがいたとして、バーテンダーさんからちょっと前の

25年を勧められたりする。けどそのお店には飲めない60年代のマッカラン18年があったりする。話を聞くと「60年代後期の

マッカランはパーフェクトマッカランと言われておりまして。。。」「機会があったら開けたいんですけどね」といいながら、お客さん

はそのちょっと前の25年を飲む。これもいまや結構な値段。

 

たしかにレアなボトルがあることは店の歴史に思いをはせる意味ではいいかもしれません。でもなんで今飲める最高のものを

オーダーしてるのに、さらに価値のありそうな、開けないボトルを前にして飲まなきゃいけないのか。ドライマティーニをジン・スト

レートで、ベルモットのラベルを見るっていうのとは全然わけが違うのですから。

 

昔のように見栄飲みしたり、ラベルに幻想を抱く時代ではありません。飲もうと思えば飲める店がある時代です。

そんなお店に入ってしまったことを後悔するしかありません。

 

お客さんからみれば、そのBARがレアなボトルをもっていることでのメリットはさほどなく、バックバーにあるものはどれでも

飲みたいものを安価に飲ませてくれることで、初めて感謝の気持ちが芽生えるのです。

 

BARはその日その場所で最高の1杯を提供する場所であるはずであり、妥協を提示する場所ではないはず。

 

今この瞬間の最高の1杯を飲むのに、見えないほうがいいものもありますよね。

 

 

 

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#理想のBAR

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