モルトの会、テイスティングノート
2014.3.23 スタンドバーにて
今月のお題は、「リトルミル」である。
濡れたダンボールの香りと揶揄されるリトルミルであるが、かつてオフィシャルボトルをテイスティングした時は、言いえて妙と思ったものだ。
そんなリトルミルなので世間一般の評価は芳しいものでは無い。が、しかしどうだろう今回の5本はそんな印象のかけらも無いではないか。
特にシェリー樽熟成の2本は素晴らしい出来で、シェリー樽による成功例のひとつ、長期熟成のグレングラントのようであった。
このことから蒸留所の設備、環境により濡れたダンボールが醸し出されるのは否定されたのである。ますますハウススタイルとは何かを考えさせられるお題ではあった。
もちろん今回の5本は、ローランダーを自称する会のメンバー取って置きのモルトなので美味くない訳が無い。
一般的に軽い味わいといわれているローランドモルトの個性も言い当てることは出来なかったことも付け加えておく。
さて、今回のモルト5本を紹介することにしよう。
*** [No.1] マーレイ・マクディビッド リトルミル バーボン 1215bottles 1990-2008 18年 53.5% ***
(香り) 甘い香りが強く立つ。追ってミントが爽やかに香る。しばらくするとバニラが前に出てくる、バーボン樽熟成の個性。 良い意味での麦芽風味が感じられる。エレガントな酸味も広がり、香りの数の多さに何度もグラスを回すことになる。
(味) 熟成感につながるウッディな味わい、基本的にフルーティではあるが、時にドライに感じることもある。
*** [No.2] ムーンインポート リトルミル 1984-2008 55.1% ***
(香り) たいへんエレガントな酸味、奥にはわずかなピート。しばらくするとバニラの香りが前に出てくる。酸味のせいか爽やかなイメージのモルトである。
(味) 甘さ控え目、ドライではあるが、加水すればフルーツと甘さが出てくる。単調な味わいでは無い。
*** [No.3] ザ・ネクター・オブ・ザ・デイリードラム リトルミル 23年 55.5% ***
(香り) トップノートはヌカの香り、ただし軽いものである。ヌカはわずかなピートのせいかもしれない。しだいにエレガントなフルーツの香りがひろがり、色あいが派手になってくる。 さらにグラスを回していると、熟成感由来のウッディな香りに包まれる。わずかなバニラがアクセント。
(味) フルーティではあるが、にがみ、渋みが感じられる。ただし熟成感とバランスした渋みなので、プラスに働く種類のものだ。基本的にはドライな味わい。
*** [No.4] ウイスキー・エイジェンシー リトルミル シェリーウッド 1/264 1989-2011 21年 47.1% ***
(香り) こげたゴムの香り、醤油の香りも。シェリー樽熟成の個性ではあるが、嫌味に感じ無いぎりぎりのところだ。 しだいに爽やかな酸味をおびたスィートな香りに変化し、シェリーの嫌味は薄れていく。
(味) 甘い含み香とトースティな味わい、シェリー樽の個性ではあるが上質なものだ。フルーツもしっかりと堪能できる。
*** [No.5] ザ・アーカイブス リトルミル リフィルシェリーホッグスヘッド 1/120 1989-2011 48.3% ***
(香り) トップノートはこげたゴム。しぶみやタンニンを思わせる香り。しだいに熟成由来のウッディな樽香に包まれ、シェリー樽での熟成がたいへん上手くいっていることを感じる。バニラの香りもわずかにプラスされる。
(味) 軽いイオウを感じたあと、熟成感を十分に堪能できる味わいに変化する。それは深い樽香であったり、しぶみ、にがみであったりする。久しぶりの上質なシェリーウッドに頬が緩む。