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オーシャンの系譜(23) 三楽酒造の黄昏。

メルシャン(昭和36(1961)年)、オーシャン(昭和37)を次々と買収して、総合酒類メーカーの地位を確立した三楽酒造

主なブランドについて、現状を見てみる。
「三楽」
キリンの商品に、
・合成清酒「三楽」(1800ml)、
・甲類焼酎「三楽」シリーズ。

「サンラック」
キリンの商品に、
・「サンラック・ドライ」(甲類焼酎。360ml、1800ml)のみ。

「オーシャン」
キリンの商品に、
・「オーシャン・ラッキー」(2700ml、4000ml)のみ。

念のために書くが、キリンがこのような製品構成にしたのではない。
キリンの傘下に入る以前から、三楽酒造が販売していた商品である。

これからふたつのことがわかる。

第一は、
需要開拓への高級化、新製品開発のマーケティング戦略に失敗したこと。

以下は、酒類市場のピーク年である。
昭和48年  清酒
昭和58年  ウイスキー
平成6年   ビール
平成10年  ワイン
平成16~18年が、焼酎のピークと推測される。
年々マーケットが縮小している酒類業界では、日本酒離れに純米酒や吟醸酒で下支えし、焼酎は甲類から乙類(単式蒸溜器で造る本格焼酎)へ転換し、ともに高級化で対処した。
ビールはプレミアム化を図るとともに、新製品の第2、第3のビールで新たな需要を作った。
ウイスキーもモルトウイスキーに力を入れ、ハイボールなど新しい飲み方(実は昔からあったカクテル・・・笑)を提案し、需要減少に歯止めをかけた。

ほかの総合種類メーカーと同様に、三楽酒造も事業拡大に向けて大いに努力を重ねたはずだが、いま残る上記の旧三楽酒造商品は、いずれもノー・プレミアム、低価格帯のものだ。
残念だが、顧客がブランドを指定して、在庫がなければ取寄せしてでも購入したい商品とはいえない。

第二は、
大衆嗜好品では「ブランドは顧客のもの」という経営理念がなかったこと。

写真は数年前に、蒸溜所で購入した軽井沢シングルカスク
どこにも、かつて日本の3大ウイスキー・ブランドであった「オーシャン」の文字はない。



血と汗と涙と(多額の資金を湯水のごとく)流して自らの「ブランド」を確立した者たちが、ブランドの価値を理解し、ブランドに対する誇り、尊敬、愛着、熱意、愛情・・・を持ち、ブランドの価値を守り、さらに高め、ブランドを次世代に伝え、引き継いでいく。
特に酒のような嗜好品の場合には、多くの顧客はブランドで商品を選ぶものだ。

サントリーは、三楽酒造(昭和醸造)設立3年後の昭和12年から(基本的に)同じコンセプトと亀甲型デザインの「角瓶」を造り続けて、いまを確立した。
三楽酒造と同じ昭和9年創業のニッカウヰスキーは、ニッカブランドを確立し品質を守り続けて、いまを築いている。

三楽酒造は、創業して75年間に6回、社名を変えている。
昭和9年   昭和酒造
昭和16年  昭和農産化工
昭和24年  三楽酒造
昭和37年  三楽オーシャン
昭和60年  三楽
平成2年   メルシャン
戦前、戦中は営業努力をしなくても売れる軍需品で成長し(他の酒造会社も同様だが、社名は変えていない)、戦後は買収と合併を重ねて総合酒類メーカーになった三楽酒造には、血と汗と涙と(資金を)流してブランドを作り上げた歴史がなかった。
それが「ブランドは顧客のもの」(社名も)という経営理念にならなかった理由だと思う。
三楽へ改称から僅か5年後、メルシャンに社名を変えたときが総合酒類メーカーとして白旗を上げ、単品メーカーに戻った瞬間であった。

さて唯一残ったブランドが、
「メルシャン」
であり、日本のワインNo.1の会社になっている。
残念だがメルシャンは買い取ったブランドだ。

2006年の6大ワインメーカーのシェア。
メルシャン  20 %
キリン      5 %

サントリー  15 %
サッポロ    8 %
アサヒ      8 %
キッコーマン 7 %
 (計)     63 %

【参考媒体】
■ キリンビールHP
■ メルシャンHP

#オーシャン

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