メルシャン(昭和36(1961)年)、オーシャン(昭和37)を次々と買収して、総合酒類メーカーの地位を確立した三楽酒造。
主なブランドについて、現状を見てみる。
■ 「三楽」
キリンの商品に、
・合成清酒「三楽」(1800ml)、
・甲類焼酎「三楽」シリーズ。
■ 「サンラック」
キリンの商品に、
・「サンラック・ドライ」(甲類焼酎。360ml、1800ml)のみ。
■ 「オーシャン」
キリンの商品に、
・「オーシャン・ラッキー」(2700ml、4000ml)のみ。
念のために書くが、キリンがこのような製品構成にしたのではない。
キリンの傘下に入る以前から、三楽酒造が販売していた商品である。
これからふたつのことがわかる。
第一は、
需要開拓への高級化、新製品開発のマーケティング戦略に失敗したこと。
以下は、酒類市場のピーク年である。
・昭和48年 清酒
・昭和58年 ウイスキー
・平成6年 ビール
・平成10年 ワイン
・平成16~18年が、焼酎のピークと推測される。
年々マーケットが縮小している酒類業界では、日本酒離れに純米酒や吟醸酒で下支えし、焼酎は甲類から乙類(単式蒸溜器で造る本格焼酎)へ転換し、ともに高級化で対処した。
ビールはプレミアム化を図るとともに、新製品の第2、第3のビールで新たな需要を作った。
ウイスキーもモルトウイスキーに力を入れ、ハイボールなど新しい飲み方(実は昔からあったカクテル・・・笑)を提案し、需要減少に歯止めをかけた。
ほかの総合種類メーカーと同様に、三楽酒造も事業拡大に向けて大いに努力を重ねたはずだが、いま残る上記の旧三楽酒造商品は、いずれもノー・プレミアム、低価格帯のものだ。
残念だが、顧客がブランドを指定して、在庫がなければ取寄せしてでも購入したい商品とはいえない。
第二は、
大衆嗜好品では「ブランドは顧客のもの」という経営理念がなかったこと。
写真は数年前に、蒸溜所で購入した軽井沢シングルカスク。
どこにも、かつて日本の3大ウイスキー・ブランドであった「オーシャン」の文字はない。
血と汗と涙と(多額の資金を湯水のごとく)流して自らの「ブランド」を確立した者たちが、ブランドの価値を理解し、ブランドに対する誇り、尊敬、愛着、熱意、愛情・・・を持ち、ブランドの価値を守り、さらに高め、ブランドを次世代に伝え、引き継いでいく。
特に酒のような嗜好品の場合には、多くの顧客はブランドで商品を選ぶものだ。
サントリーは、三楽酒造(昭和醸造)設立3年後の昭和12年から(基本的に)同じコンセプトと亀甲型デザインの「角瓶」を造り続けて、いまを確立した。
三楽酒造と同じ昭和9年創業のニッカウヰスキーは、ニッカブランドを確立し品質を守り続けて、いまを築いている。
三楽酒造は、創業して75年間に6回、社名を変えている。
昭和9年 昭和酒造
昭和16年 昭和農産化工
昭和24年 三楽酒造
昭和37年 三楽オーシャン
昭和60年 三楽
平成2年 メルシャン
戦前、戦中は営業努力をしなくても売れる軍需品で成長し(他の酒造会社も同様だが、社名は変えていない)、戦後は買収と合併を重ねて総合酒類メーカーになった三楽酒造には、血と汗と涙と(資金を)流してブランドを作り上げた歴史がなかった。
それが「ブランドは顧客のもの」(社名も)という経営理念にならなかった理由だと思う。
三楽へ改称から僅か5年後、メルシャンに社名を変えたときが総合酒類メーカーとして白旗を上げ、単品メーカーに戻った瞬間であった。
さて唯一残ったブランドが、
■ 「メルシャン」
であり、日本のワインNo.1の会社になっている。
残念だがメルシャンは買い取ったブランドだ。
2006年の6大ワインメーカーのシェア。
メルシャン 20 %
キリン 5 %
サントリー 15 %
サッポロ 8 %
アサヒ 8 %
キッコーマン 7 %
(計) 63 %
【参考媒体】
■ キリンビールHP
■ メルシャンHP
#オーシャン