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困惑

久しぶりに「バーボン」の話を書こうと思っている。
BOURBON STREET K”s BAR マスターです。

あまり乗り気ではないんですが・・・。

その人がいらっしゃったのは
秋も終わりに近づき冬になろうとしている頃

もう随分召し上がりいい感じで当店の扉を開けました。

M(私)、「いらっしゃいませ」
X(お客様) 「どうも 久しぶりです」

M 「お元気そうで」
X 「何とかやってます」

M 「今日は、如何しましょう?」
X 「アーリーのソーダ割り」

M 少し嫌な予感がしながらもボトルを彼の前に置く
  「プレミアムですが・・・。
X やはり少し嫌そうな顔でうなずく。

しばし雑談をし彼のグラスが空になる

M 「お次は?同じのでよろしいですか?」
本当は違うのを飲んで戴きたい私。
X 「ジャック ソーダで」

M ちょっと憂鬱な気分でボトルを彼の前に
X さっきより嫌そうな顔

M 「同じ飲み方で よろしいですか?」
X 「ここはこれか! んー。 (眉間に皺を寄せて) お願いします」

しばし仕事の話をして
秋の蒸留所視察の話になる。
そして、彼の行ったスコットランドの話を聞く。
徐々に彼のグラスの液体が減る。
氷の音が店内に心地よく響く。

彼の視線がバックバーを泳ぐ。
お願いだからモルトを注文して頂きたい私。

M 「モルト 如何ですか?」
X 「さっきの店でモルト飲んで来たんですよ」
M 「では、ジャパニーズでも」
X そんな言葉は耳に入らなかったように
  「フォレスター ソーダで」

M 心の中で 「あーっ フォレスターは・・・。」
  と呟きながら彼の前に困惑しながらボトルを置く。
X 物凄く嫌そうな溜息と落胆した表情

M 「すみません 今これなんです」
X 「マスター・・・。」

X ボトルから視線を外しまたバックバーを眺める
  リキュールを見て、ラムのコーナーで少し視線が止まる。
M 「そこも見ないで欲しいなぁ 目の届く所に安心安全なで御社のモルトがあるのに・・・。」
   と心の中で呟く。

X 再度バーボンの所で視線が止まる。
M 「最後の砦 初めからこれなら良かったのに・・・。」
  と心の中で彼が次に注文するだろう物を先に意識して思う。

X そして溜息と一緒に
  「ウッドフォード」
  そして嫌そうなしゃべり方で
  「ロックで」
M 少し安堵。
  「かしこまりました」

彼の前にロックグラスが出る。

X ボトルを手に取り横のラベルを確認し少し安堵の表情。
  笑顔が顔に戻る。
  「マスター 嫌がらせですか? 頼みますよ。」
M 私も笑顔で  「嫌がらせではないんですが・・・。偶々です。偶々。」

X 「せめてジャックの他のお願いしますよぉ」
M 冗談交じりに
  「モノグラムでいいですか?」
X 「いじめないで。 当社の現行のラインでお願いしますよぉ」
M 「分かりました。 今のが開いたら入れますよ」

なんて会話をしているうちに他のお客様が来店。

X 「では、私はこれで帰ります。」
M 「ありがとうございました。」

私が彼の為に扉を開ける。
彼が表に一歩出て、振り返りざまに
モルトラリー お願いしますね」と
言葉を残し下妙蓮寺ギンザにある当店を後にした。

A(彼と入れ違いにいらっしゃったお客様)
  「なににしようかな?」
M 「如何しましょうか?」
A 「アーリー ソーダで」
M 苦笑しながらボトルに手を伸ばす。

たまにはこんな一コマを書いてみました。

今日も一押しお願いします。
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By マスター

#バーボン

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