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思い出の酒~ニューヨーク~

2回目の二十歳の時、働いていたBar

カジュアルでも、オーセンティックでもない(マスターはしっかりしたマスターなのですが、なにせスタッフが私だったもので・・)

カウンターには週に5~6は来る常連さんが、思いつく限り5~6人、週2~3くらいの人を合わせたら結構居たように思います

初めてのBarという空間の中で、常連さんが政治の話や、ゴルフの話や、昔話などをしている風景は、自分の様な薄っぺらい人間が口を挟んではいけない領域のように思えました

ただ定期的に、グラスを洗い、ボトルを拭き、灰皿を代え、伝票を付け忘れることくらいしかできませんでした(よくお給料もらってたな)

テーブル席にオーダーを受けに行ったとき、一見のBar初心者っぽいお客さまに

「ニューヨークってどんなカクテルですか?」と聞かれました

カクテルの名前もろくに知らない私でしたから、マスターに確認。すればよかったのですが、お客さまと私には理解不能な高尚な横文字会話をしていたので、なんとなく気が引けたのでしょう。近くにあったバーテンダーマニュアルをコッソリ広げ、

「ウイスキーにライムやグレナデンシロップを加えたショートカクテルです」

と言いました

客「グレナデンシロップってなんですか?」と今度は返って来ました。

グレナデンシロップ・・なんかあの赤いシロップだよなぁ・・「赤いシロップです」・・じゃあんまりか・・

とまたまたバーテンダーズマニュアル(お客さん、今考えたらよく待ってくれたなぁ~)

とにかく「一人で出来るもん」気取りだった私です

私「ザクロの果汁から出来たシロップです」

なにやら会議をしている模様・・結局はニューヨークのオーダー。

ここで初めてマスターにオーダーを通し、ニューヨークとご対面。まぁ綺麗な色

お客さまも満足のご様子でした。心が広い

なんとな~く、ひとつのカクテルを理解できた気がして(作れませんでしたが)、レシピも覚え、自分のバリエーションのひとつになった気がしました(多分その後しばらくは、「お勧めのカクテルある?」って聞かれたときは、覚えたての「ニューヨーク」か「ハイボール」やったと思います笑)

っと、実はここまでが前置き。

それから一年ほどそのBarで働き、出来ることが、グラスを洗う、ボトルを拭く、灰皿を代える、ちょっとした会話、ピックで指を突く、くらいに増えてました

大分に帰ることが決定し、バーのバイトもやめることに

そのバーでは、「ラストナイト」なるものがあり、スタッフが辞めるときはお客さま一同がそれに乗じて馬鹿騒ぎをするのです

もちろん、貸切。

あれ飲めこれ飲め言われて、レモンハートのデメララを3杯飲んだところで私は廃人と化したのですが、急に起き上がり、ニューヨークをオーダー

マスターが「大丈夫か?」と言っていた気がしますが、よっぽど飲みたかったのでしょう。急にシャキっとして

「大丈夫です。お願いします。」体育会らし黒い肌から白い歯を輝かせて爽やかに言いました

周りからは爽やかコールが出ていたくらいですから

恐らく気遣いであろう口当たりの優しいニューヨークを、これまた覚えたての「三口で飲む」を実践し、グラスを空にしました。

なんだかその時、酔いとニューヨークの甘みと酸味が混じり感慨深い気持ちになりました

気づいたらグラスを高々掲げて、こう言っていました

「マイフェーィヴァレーッドカクテルイズニューヨーク!ありがとう!!」

・・・

・・・

で、倒れたそうです

・・・

お付き合いありがとうございました

#DEKACHO思い出の酒

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