グラスは、酒を飲むための道具でしかなく、バカラであろうと100円均一であろうと、基本的には同じである。口当たりや手に馴染む感じが、これはいいとか、こっちは安っぽいとか思ってしまうが、先に値段を知っているのでそう思うだけのような気もする。
しかし、中身のウイスキーはこだわって選ぶのだから、やはりグラスにもこだわりを持ちたい。アクセサリーと同じで、自分に合う、気に入ったものに出会えると嬉しくなるものだ。
ウイスキー、特にモルトウイスキーの命は、その香りであろう。本には「香りの芸術品」などというほめ言葉で表わされている。フローラル・ピーティー・フルーティーなど香りを分け、もっと細かく、刈り取ったばかりの麦畑の香りとか、紙屋の倉庫の奥の濡れたダンボールとか、読んでも想像しにくいものもある。とりあえず飲んでみることをお薦めする。(私なりのテイスティング方法については後日アップする予定)
その香りを楽しむのに適したグラスとなると、口の部分がすぼまっており、胴の部分が膨らんでいる、ランプシェードのような形、ルノワールの描く女性的な線を持ったともいえる、をしたものになる。
サイズは、30ccの酒と少しの水を入れたときに、グラスの膨らみの部分で収まるのが理想である。
モルトウイスキーは、基本的に常温で飲みたい。加水する場合も、冷えすぎていない水を使うほうが、より正しく、香りと味を判断できると思っている。店の飲み方7ヶ条に「好きな酒を好きなように飲むべし」とい謳っており、強制するつもりは毛頭ないが。
開店するまでに、色々なバーを飲み歩いたので、出会ったモルトグラスも様々であった。ステム(脚)のあるもの、ないもの。極薄のもの、薄手のもの、やや厚めのもの。クリスタル製、ガラス製。蓋のあるもの、ないもの。
ステムなしで、やや厚めで、クリスタル製。蓋は閉める前に、中身がなくなるので不要。というのが、私の理想。
以上の条件の他に、入手しやすさとか、洗いやすさとか、丈夫さとか、値段とかが問題になってくる。ここのところは、商売の悲しさで、どうすることもできない。
グレンケアン・クリスタル社のスコッチ専用グラスを選んだ。ブレンダーズ・モルトグラスという呼ばれ方もあった。ひょっとして、ジェームス・ブキャナン(ロイアル・ハウス・ホールドをこの世に生んだ、偉大なる歴史的ブレンダー)も使っていたかも。2001年に発表されたグラスなので、その心配はなさそうだが。
モルトウイスキーの香りを100%逃さぬグラス
タフでかつ繊細なグラス
いいグラスに出会えたことに感謝。
ただ、このグラスを手にすると、飲みすぎるような気も・・・
7ヶ条に「自分の酒量を知るべし」なんていうのもあったっけ。
#グラス