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群れ

 朝日に向かって釣りに出掛け、一日我を忘れ、夕日を背負って疲れた足を引きずって帰った日のことを思い出す。
 この陽気がそうさせるのか、ストレスが溜まっているのか、そのあたりは定かでない。

 情報が確かでさえあれば確実に釣れる釣りといえるのが「サビキ釣り」であろう。アジ・イワシ・サバなどが対象となる。
 足場のしっかりした波止から足下を釣るのだから、老若男女を問わず楽しむ事が出来る。
 それでも釣果を求めれば、腕の差が出る釣りでもある。相手や相手のサイズによって、仕掛けを変えることは重要である。またカゴに入れるアミエビの量の調節や、撒き方にもコツがある。掛かった魚のはずし方や、仕掛けのトラブルを減ら仕方にもちょっとしたテクニックを要求されるのだ。
 回遊してくる魚をターゲットにしているので、釣れたらよいぐらいに構えていれば、日長一日のんびりするにはもってこいである。トーナメントの釣りなどとは違って、緊張感の無さが良いのだ。
 
 この魚たちは群れで行動している。リーダーがいてその後ろをゾロゾロ付いて泳いでいるわけではない。危険を感じた魚は自分が真っ先に逃げ出す。それに気付いた隣の魚がついて行く。その両隣も、その両隣もと連鎖していくのだ。
 餌に気付いた場合もよく似た行動をとる。1匹が餌に食いつく。その行動に気付いた魚が餌の存在に気付く。いきなり群れ全体が腹減ったモードに突入する。こうなると魚の警戒心は全くなくなり、餌らしきものを手当たり次第に口にする。たとえそれが針の付いた疑似餌であっても。
 釣り人は「釣れた釣れた」と喜び、魚の群れは「餌だ餌だ」と喜んでいるので、仲間が減ったことに気がつかない。

 弱い魚ほど群れを作っているものだ。

 人間もいっしょか。
 

#釣り

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