閑古鳥ご一行様のみご来店状態で本に没頭していると、カラ〜ンとドアが開いた。
椅子から飛び上がって「いらっしゃいませ」と余所行きの声を出してみると、制服の警官が二人立っている。
ドアを開けただけで、中には入って来ない。
何かやったっけ?とドキドキ。
どうも警官を見ると、自分が悪いことをしたかのように思う自分がある。
昔々にいたずらをしまくって、おふくろから「警官に連れて行ってもらうヨ」と怒られたからなのか?
入り口を塞がれているのも困るので、中へ招き入れた。
若そうな警官と、私よりやや年を重ねていそうな警官の二人が入ってきた。
「昨日12時頃、お店はやってはりました?」
と若い方の警官に、しっかり大阪弁で聞かれた。
「まだやってましたけど」
と答えながら前日の事を思い出しながら、うちのお客さんが何かトラブルにでも巻き込まれたんやろか?まさか何かやらかしたんとちゃうやろな。などと、こちらも大阪弁で考えていた。
「その頃に変な人見ませんでした?」
変な人って言われても、酔っぱらってない人はほとんど歩いていない時間帯である。歩いている人はみんな少しは変な人になっている可能性がある。ましてや大阪屈指の変な人密度の高い十三なのだ。咄嗟に口から出た答えは
「ここ十三でっせ」
その返事が
「そうですね。お邪魔しました。」
これだけの聞き込みで帰って行った。
次の日、近所の居酒屋でこの話をすると、ごく近所のビデオレンタル&試写屋に強盗が入ったとのこと。
それなら、年齢や性別ぐらいは分かっていそうなもの。変な人って聞いて歩いても何も聞き出せないであろう。日本の警察は世界に誇れるなどと聞いた事があるが、疑わざるを得なくなる。
「ここ十三でっせ」の一言で、警察に協力するつもりが無いとでも思ったのだろうか。それとも某酒屋の営業のように、聞き込みに行った数を自慢する為に来たのか。名刺をくれとは言わなかったが。
ところが数日後にお客様から、その強盗が逮捕されたと聞いた。
さぞ変な人が捕まったのだろうと思いつつ、なんとなくその犯人に会ったみたい気分になった。
あの聞き込みが役に立ったのか?
あるお客様から、聞き込みに対する正解を教えてもらった。
「私より変な人っていますか?」
#大阪・十三