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下足

 このシーズンはアオリイカ(場所によってはミズイカとも言うらしい)の大型が出回る。産卵を終えた烏賊達が、体力回復のため荒喰いするので、釣りやすいし網にも入りやすい。2?をこえると下足もそれなりに大型化し、モチモチして甘みがたっぷり出てくるのだ。
 下足だけでも買いだが、エンペラがおまけに付いていると迷わずに買いである。エンペラたるや胴より遙かに美味しいのだ。常に動いている部分の方が、滅多に動かない部分よりも締まっている。烏賊の中で常に動いているのは、エンペラと心臓ぐらいであろう。次によく使われているのが、下足である。胴なんてオマケのような高級品だ。

 3?を超えるものは、ほとんどが雄である。烏賊の世界では人間界とは異なり、雄の方が大きく(太く)育つようである。
 同じようなサイズの雄と雌を食べ比べたこともあるが、これは味に大差は無いように思えた。
 エンペラと胴と食べ比べたら、2?を超える物に対しては、エンペラの方が美味い。
 下足と胴を比べても、下足の方が美味いと思う。

 もちろんモルトのお相手をしてもらおうなどとは思わない。
 炙ったら日本酒、炒めたらビール、煮物にしても酢の物にしても硬くならないので、日本酒・ビール・焼酎など何にでも合う。
 日本人である事に感謝したくなる食べ物の一つである。

 富山で料亭に行ってホタルイカをオーダーしたら、下足だけがでてくる。生で提供して、間違ってアニサキスがいたら洒落では済まされない。だから、生のホタルイカは下足のみお客さんに出すという。もちろん胴は、酢みそ和えやかき揚げなどで使うのだが。
 大阪でそんな出し方をしたらお客様から文句を言われるに違いない上、そんな手間を掛けてはくれないであろう。
 
 貧乏人は下足が似合っているのではなく、本物を知る者こそ下足を喰うのだ!
 と、見栄を張ってみた。(笑)
 

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