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燗酒

 太陽の光が弱ってくるこの季節になると、鍋でもつつきながら日本酒の燗が飲みたくなる。

 昔の料亭にはお燗番という仕事があり、座敷までの時間でさめる度合いやお客様が何杯目であるかなど、細かい点まで計算しつくして仲居さんに運んでもらったようである。芸者さんが「熱いところをお一つどない」などと言って勺をしてもらって、鼻の下を伸ばしていたものである。

 しかし最近は酒燗機の普及と共に、お燗番などという仕事がなくなってしまった。ひどい場合は、徳利が山盛り電子レンジで回っていたりすると、色気も素っ気もない。

 日本酒の燗は温度によって、日向燗(ひなたかん)・人肌燗(ひとはだかん)・ぬる燗(ぬるかん)・熱燗(あつかん)・上燗(じょうかん)・飛切燗(とびきりかん)の6段階に分けられている。うんちくついでに冷酒は、涼冷え(りょうびえ)・花冷え(はなびえ)・雪冷え(ゆきびえ)の3段階に分けられている。

 昔は居酒屋でも「今日は冷えるから熱燗で頼むわ」とか、「3杯目やから人肌につけといて」といった会話が聞かれた。日本酒がはやらない原因の一つに、酒の燗に対する色気の減少があげられるのではなかろうか。

#日本酒

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