ある駅を降りた
政令指定都市の駅からほど近い場所。
駅に隣接して寺がある。
駅から苦もなく山門には入れる。
寺とは反対の方に進み
言われた通りに
突き当たりの文具屋兼たばこ屋を左に曲がる
俺にこれからいく店を教えてくれたのは
よく行く店のバーマンだった。
こんな店もあるから行ってみなよ
そんな軽い教え方だった
別に大した興味も無かったが
日頃ろくに話しもしないバーマンが
教えてくれたので少しだけ
引っかかっていた。
どこで飲んでも
酒の味なんか同じだろ
と言ったときに
あのバーマンは各店で味が違うと
力説していた。
中身が違うのかと
聞いたら
酒の味は店の作り、飲む人間の思い入れ
その時の全ての感情や店内の
有形無形の空気でも味が違うと言っていた。
有形無形の空気でも味が違うと言っていた。
俺には分からなかった
酒を飲み初めて
数十年銘柄には詳しくはないが
好きな酒はある
そのバーマンが言うとおり
なだらかな坂を下ると
大手コンビニエンスストアーが見えてきた
そこから少し進み左手にその店は
おおよそバーらしからぬ程に
煌々と電気をつけて営業している
普段行く店は概ね
営業しているのかいないのか
分からないような
ともすると看板すら見落とすような店ばかりだが
この店に限っては
並びにある居酒屋より明るい
しかも外からでも
中が伺い知ることができる
少し落ち着かない
外から見られながら酒を飲むのか
一瞬通り過ぎた
外から見る限り
小さい店だ
二階は住居なのか
カーテンが引かれている
カーテンが引かれている
店を通り過ぎて暫く歩くと
何もない町だった
住宅街にあるバー
その横にはフランスの
国旗を掲げたレストランと居酒屋
国旗を掲げたレストランと居酒屋
三件しか店がない
寂れた町だ
繁華街ではなく住宅街だからか
戻って店の前に立つ
ここを教えてくれたバーマンの店には
バーボンばかり500本もある
アメリカの禁酒法時代から現在まで
そんなバーマンが勧めるのには理由があるのだろ
あのバーマン曰く
この店のバーマンとは知り合いなのだそうだ
この店のバーマンとは知り合いなのだそうだ
扉に手をかける取っての所に小さく
押す
と書いてある
扉を押した
ここでギーとでも鳴れば
古めかしい店かと思うが
難なく開き店内に
店内ではバーマンが
炎をグラスに注いでいた
周りにはカラメルの香りが立ち上っている
グラスから目を離すこともなく
「いらっしゃいませ」と
俺は勝手に歩を進め
店内一番奥のカウンター席に
座ろうとしたところバーマンが
出てきて上着を預かってくれた
座ろうとしたところバーマンが
出てきて上着を預かってくれた
店内には小さくJAZZが流れ
カウンターにはサラリーマン風のが一人
ホットグラスでカクテルを飲んでいる
バーマンはその客と話をしていてこちらはお構いなし
その間にバックバーを物色していると
教えてくれたバーマンの店よりは少ないが
俺の好みの酒がある
それだけではなくラムもテキーラもモルトも
どうやら大概の物は数は少ないけれど置いてあるようだ
サラリーマンとの話が一段落してから
俺の前に来たバーマンにジンリッキーを注文する
グラスに氷を入れ
ジンを入れてライムを絞る
最後にソーダ水でグラスを満たし
スゥッとバースプーンを入れて出来上がり
ソーダ感が良い
カウンターに煙草とライターを
置くとサラリーマンと話しているにも
関わらず自然と灰皿が出てきた
置くとサラリーマンと話しているにも
関わらず自然と灰皿が出てきた
左手奥から明かりが漏れている
中では食器の音や調理の音
誰かいるようだ
教えてくれたバーマンは
夫婦でやっていると言っていたのを思い出した
カラン
ジンリッキーが空いた
外から見える店内だが中にいる分には外が気にならない
視界に入らないからか
煙草をくわえ火を点ける
サラリーマンを見送ったバーマンが
何にするか聞いてきた
「1855リザーブ」
俺の好きな酒
最近ではあまり見なくなった
ここにもあったのか
ショットグラスで出てきた
いつもの店ではワイングラスで出てくる
チェイサーには氷の入った水
一口啜る
ワイングラスで飲むより雑な気がする
香りはワイングラスの方が良い
同じ酒でも店で味が違う
中身は同じなのに
成る程少しだけ分かった
煙草を吸い終わるのと同じくして
グラスも空に
バックバーを眺める
教えてくれたバーマンの話をすると
謙遜したようにあの店を褒める
「ケンタッキーレジェンド」
確かにこれもあの店とは味が違う
白いシャツに蝶ネクタイにベスト
少し違うのが蝶ネクタイだ
見たことがない
どうやら既製のゴムが入っているやつではなさそうだ。
聞けば
一本の紐を毎回自分で結んでいると
オールドスタイルなのか
もう製造していないらしくなかなか手には入らないらしい
三杯目が空いた
座席の後ろには写真が掲げてある
中央にはここのオーナー達と並んで見覚えのある爺さんの顔
ジミーラッセルだった
写真の中に彼が椅子を
持ち上げて物もある
同じ椅子が俺の一つ離れたところにあった
この店に二度来たのだと言う
ここのバーマン達は
ケンタッキーにも行っていると
ケンタッキーにも行っていると
その話は次回に聞くとしよう
そして俺の席の横には
「ケインタッキー蒸留所視察」と
書かれた分厚いアルバムがある
書かれた分厚いアルバムがある
面白い店だ
そんな話をしに
いつもの店に行くとしよう
会計をすると
奥から女性が出てきた
バーマンはカウンターの外に出て俺の上着を手に持っている
会計を済ませ上着を着せてもらい扉が開く
「ありがとうございます」との言葉に押されて外に出た
来るときはなだらかな下り坂が
帰りは緩い登りになる
帰りは緩い登りになる
冷たい夜風に吹かれて駅を目指す
人通りの少ない町だ
そう言えば
いつもの店にもある
赤い蝋がかかっているように見える
樽があの店にもあった
壁はパブミラーが整然と並んでいた
飾りの多い店だ
そんな店もあるんだな
いろんな店があり
同じ酒でも店により味が違う
店が違うだけではなく
店に付随する全てが違うから
味が違う
それがバーと言うものものなのか
それを教えるために
いつものバーマンはあの店を教えたのか
酔っぱらいの俺に
坂を登りきった
駅の方から人が数人歩って来る
電車が着いたのだろう
駅のホームは閑散としていて
天井の蛍光灯だけが燦々としている
ほろ酔いに風が気持ちいい
雑文失礼致しました!
PCの方はこれを!