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初体験

 何事にも初体験はあるものである。
 いついかなる状況であろうと、初体験の場合は緊張するものである。

 ローマで市バスに乗ったのはいいのだが、何時お金を払って良いのか分からず、代金を握りしめたままバスに乗り、降りたときもそのお金を握っていた経験がある。ただ乗りしようとしたわけではなく、切符の買い方が分からないまま目的のバスが来てしまい、結果的に無賃乗車になったのだ。と言い訳しておこう(笑)。後でバス停の近くの売店で切符を買っておかねばならないということを知った。
 ニューヨークの地下鉄は、トークンを入れてガチャンとゲートをくぐれば良いことは知っていたが、映画でゲートを飛び越えて行く若者の姿を見ており現地でも目の当たりにしたので、一度だけチャレンジして成功したことはある。ただ現地人のようにスマートには行かず、おもいっきり臑を打つという代償を払わされた。

 乗合船を使って船釣りに出かけたときに初めてのお客さんから、「お金は何時払ったらいいのでしょう?」と尋ねられたことがある。その方もお金を握りしめていたのだろうか。地方によって違うのかも知れないが、関西では船を降りる時に払うのが普通である。船が沈んだら払わなくてもよいシステムなのだ。

 バーの中にはキャッシュオンデリバリーという店もあるようだが、基本的には帰り際に支払うことの方が多い。これで困るのが、財布を忘れたことに、その時になって気付くことである。ホテルバーならキーを示すだけで済むのだが、街場のバーではそうも行かない。常連になっている店だと今度まで待ってもらうことも出来るが、非常に恥ずかしい思いをすることになる。そうでない店なら夜中に誰かに電話して、お金を持ってきてもらうことになる。これも何とも情けない。サザエさんを自で行く姿は、傍目には滑稽に映ると思う。これも経験者であるが故に分かる話である。

 年を取ると初体験を済ませた事が多くなり、ドキドキ感を味わう機会は減った。
 飲んだことのないボトルの封を切る時ぐらいになってしまった自分がいる。
 たまには絶世の美女とデートする夢でも見るか。

#徒然なるままに

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