数年前の話。
メイフライ(カゲロウ)がハッチ(羽化)を始めたとの情報が入って来たので、釣り仲間とフライロッドを担いで奈良の山に出掛けた。
本流には餌釣り師が多く、フライをキャストするにはポイントが見付からないので、支流を釣り登ることに。
二人が並んでは釣れないのて、ポイントごとに交互に釣る。アマゴは数匹ネットに納めたのだが、イワナの姿は見ることが出来ないまま、弁当にした。
昼からも、同じ支流を釣り上っていくことに。
同行者はあまり釣れていなかったので、先にキャストしてもらった。小一時間が過ぎ、いかにもイワナポイントを発見。
そのポイントだけ譲ってほしいと申し出たら、雉撃ち(トイレ)に行ってくるとあっさり譲ってくれた。
慎重にポイントに近づいたその時、川下でバシャバシャと大きな音がした。
あのアホなにやってんねん!!!
そんなとこで転びやがって!!!
一発でイワナが警戒してしまうやないか!!!!!!
と、振り返った瞬間。
完全に凍りついた自分がいた。
そこにいたのはアホではなく、ツキノワグマ。
咄嗟に出たのは、悲鳴でもなく、罵声でもなく、歓声でもない。
ギョエーだったのか、ギャーがったのか、ワーだったのか、グググだったのか?
ともかく、何らかの声は出たのだと思う。
のっそりと顔を上げるクマ。
目があった瞬間、クマが一目散に山に逃げ込んでいった。
どれだけの時間が経ったかは定かでない。
「どないしたん」と寝ぼけた声がした。
今あった出来事を話したが、すぐには本気にしてもらえなかった。
これからはクマを怯えさせた男ということで(笑)
#釣り