高知出身山本一力の一冊。
旅の機内で、一気に読んでしまった。
世は元禄、江戸でもて囃されるは「灘の下り酒」の時代。
江戸の男女四人組が、はるばる土佐へ出向き、名酒「司牡丹」(とアテの「酒盗」)の販路を開拓して、江戸市中に広めて成功をおさめる物語である。
今風にいうと、商社と広告代理店を兼ねた大活躍といったところ。
幕府側用人柳沢吉保や、大豪商紀伊国屋文左衛門、鴻池善右衛門など、政財界の大物たちの支援を得たり、やたらと男気のある人物たちが次々と主人公たちを援助するのは、
「有り得ない!出来すぎ!」
と呟きつつ・・・これが山本ワールドなのだと目をつぶる。
山本一力が高知の酒「司牡丹」のPR小説というのも、郷土愛ということで・・・瞑目。(笑)
「土佐の酒は、しょうまっこと美味いぜよ!はよぅ飲みいーや!」(←正しい土佐弁になってるかな?)と、小説の行間から魅惑の誘い!
高知には、司牡丹だけでなく、土佐鶴、酔鯨、美丈夫、亀泉、桂月(大月桂月は高知出身)、瀧嵐、豊の梅、安芸虎など、銘酒多し。
厳に呑み過ぎに注意!(←自戒)
さて、山本一力作品の特徴のひとつは、銭売り(小銭の両替)、損料屋(生活用品のレンタル)、広目屋(宣伝広告)、水売り(飲み水売り)、壊し屋(建物解体)など、いままでの時代小説が取り上げなかった、でも「言われたら、確かに有る、有る」という商売を題材にして、その内情を詳しく語る江戸経済小説の一面。
例えば「銭売り賽蔵」。
幕府直轄の金座、銀座(官)に対して、幕府へ願い出て官許された町人が運営する銭座(民)が、「銭」という品物を造って売る(手数料を取って高額貨幣と両替)という話。
悪徳町人が官許を得るために幕府役人へ取り入ったり、財政の逼迫した幕府が苦肉の策として金貨、銀貨の改鋳(改悪)を行った結果、民衆の金融に対する信用を失って、今でいう金貨安、銀貨安になったり。
読んでいて、トリビアの連続(★★★★★)である。
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