本日発売された「余市1987 ノンチルフィルタード」を味わい楽しむために、南青山にあるブレンダーズ・バーへ出かけた。
ご存知のように、WWA 2008のTHE WORLD”S BEST SINGLE MALT WHISKYを受賞した「シングルモルト余市1987」を記念して発売された「ノンチル版」である。
生れついてくじ運がない(笑)ので、ネットショップの予約申込みの抽選に外れてしまい、当然ながら近所の酒屋にあるはずもなく、今回は入手できなかった。
写真の左が「余市1987」、右が「ノンチル」。どちらも55%である。
当たり前だけれど、ノンチルはゴールド色あるいはオレンジ色が、見て分かるくらい濃い。
ピート香もフルーツ香も、微妙な程度だが強くて豊かだ。
途中から「余市20年」(52%)を追加。
下の写真は、5月に行われた「余市1987」2種のテイスティング会のときの久光哲司チーフブレンダー。
佐藤茂生マスターブレンダーもご同席されていて、「シングルモルト余市1987」の世界一に、おふたりとも感慨無量のご様子であった。
我々、日本のウイスキー好きにも嬉しい受賞だ。
4月に行われたWWAの表彰式に出席された久光氏の話では、「ニッカ」が呼ばれた瞬間、一瞬会場には冷たい空気が流れたという。
本場スコットランドのウイスキーが、東洋の小島のサムライに負けた!
古い例えで恐縮だが、柔道が正式競技として初めて採用された東京オリンピックの最重量級において、外国人が日本代表を下して金メダルを取ったことが、自他共に柔道を「お家芸」と認める日本にとって、計り知れない衝撃をもたらしたのと同じようなショックだったと推察する。
西欧と北米と東洋の島国の飲み物であるウイスキーが、BRICsの台頭に伴って国際化を果たして、「世界の酒」となる道の途中の必然の出来事なのだろうか?
竹鶴威相談役は、回想録「ニッカウヰスキーと私 第71話」に、次のようにお書きになっている。
(抜粋)
私の手元に英紙・サンデータイムズのコピーが届いたのだが、そこには
Ochone! Japanese whisky is voted the best in world.
と書かれていた。
「なんてことだ! 日本のウイスキーが世界一に選ばれた」
というものであるが、あちらにしてみれば相当なショックであるに違いない。
昔、スコットランドへ出かけたとき、「日本にウイスキーがあるのか?」と言われたことがあった。
言葉の裏には、「日本のウイスキーは本物ではない」という揶揄があったのかもしれない。それが世界一になったのだから驚きを隠すことはできないであろう。
もし、政孝親父が存命だったら、このたび何と言ったであろうか。
「いいものをつくれ!」が口癖ではあったが、
「スコッチウイスキーを超えるものをつくれ」と言うことは一度もなかった。
明治の人間である。「三歩下がって師の影を踏まず」の思想があったのではないだろうか。
私には、政孝親父がひたすら喜ぶ姿は想像できない。世界一になったからと慢心せず、より品質の良いウイスキーをつくるよう諭されたに違いない。
#ニッカウヰスキー